書かれる手 (平凡社ライブラリー ほ 11-1)
書かれる手 (平凡社ライブラリー ほ 11-1) / 感想・レビュー
コットン
12人の作家を題材とした難しい学術的論文で、理解出来ない所が多い。須賀敦子や金井美恵子や田中小実昌が印象的。特に、田中小実昌への:あえて投げやりな姿勢を貫きながらも、しばしば生来の意思の弱さが顔を出して、その規定できない幻影に似たなにかを「おはなし」に転換する誘惑に負けてしまう点にある。と評価しているのは良く分かる!
2017/01/10
KAZOO
早稲田文学などに掲載された作家論を集めたもので、かなりさまざまなジャンルの作家を取り上げておられます。解説も三浦雅士さんで意外な感じがしました。堀江さんの文章というのは読んでいて静かな気持ちにさせてくれます。私は田中小実昌さんと長谷川史郎さんに興味があったので満足しました。
2014/10/15
踊る猫
私にとって堀江敏幸の散文の面白さや旨味とは、理論的な凄みではない。その理論、ないしは単に論理的で綿密に展開される思考が私たちをどこにも連れて行ってくれず、ただ文章の中で煙に巻いてしまうその「迷走」にあると思っている。ここに収められた初期の考察群はその意味で、良くも悪くも読者を食ったところがない。極めて真摯に批評を展開しようと、硬い蓋をこじ開ける時にも似た情熱を発揮している堀江敏幸の姿がある。それはしかし、高踏的すぎてこちらを置いてけぼりにするようにも感じる。堀江はこの路線から、今の親しみやすさを選ぶことに
2021/10/31
マリカ
堀江さんの物書き駆け出し時代の作家論集。今の堀江作品に感じる青白い炎と比べると、赤い火花が散っている部分もあるけれど、堀江さんは駆け出しの頃から紛れもなく堀江さんなんだと思った。三浦さんの解説がまたよかった。
2017/03/01
寛生
こんなに美しく「書かれた」本はないのではないだろか。「書きたい」けど、書けない。それでも、何かが「書かれていく」のはどうしてだろうか。『<私>である手から<私でない>手か現出するとはどういうことなのか』と堀江は問う。そして、彼はこう加える。『<私ではない手>が立ち現れるまで、彼は書こうとするのである。』と。それはまさに『「書きたいと思いつつ書くことができない」人たちが己の「暗闇を通り抜けた」』ときだけに与えられる道であり光なのか。
2012/09/24
感想・レビューをもっと見る