ジェローム神父―ホラー・ドラコニア少女小説集成 (平凡社ライブラリー)
ジェローム神父―ホラー・ドラコニア少女小説集成 (平凡社ライブラリー) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
平凡社が澁澤の死後に編集した「ホラー・ドラコニア少女小説集成」の第1巻。本篇はサドの『ジェローム神父』を収録。澁澤は「性的アナーキズム」と言うが、18世紀末のサドは、性的にのみならず(本人の意思とは関わりなく)政治的にも社会的にもアナーキストであった。もっとも、彼にあっては「カトリックの禁忌」に対する反措定でもあるが故に、絶対的な無秩序の標榜ではないだろう。ただ、こうした論理の積み重ねの先にあるジンテーゼとは、いかなるものなのであろうか。なお、小説としては、最後が哲学談義に終わる点は、やや物足りない。
2014/12/15
Shoji
読んでみましたがいけませんか。 「エ・アロール、それがどうしたの」ミッテラン大統領のスピーチを渡辺淳一ばりに開き直って言い放ってみました。 冗談はさておき、時々書評を目にするこの本、かなり哲学的でした。 サディズムなりフェティシズムとは、美徳か背徳か、エロスかタナトスか、テーゼかアンチテーゼか、誰しもが普通に持ち合わしているのではなかろうか。 それが潜在したままか顕在するかの違いのような気がしてならない。 どちらも正常。
2017/01/21
harass
数年ぶりにサド。とにかく相変わらずであると読んでいて思う。悪とはなにかと挑発しまくる登場人物のアジに、クラクラする。それは眩暈か恍惚か、その両方か。絵の会田誠が気になって手に入れた本で印刷の質は良いが、サイズが小さすぎる。大きければ大きいほどいい。ただしこの文庫本サイズでも1400円もしてしまう…… 正直、会田の絵は挿し絵にはむかないと感じる。絵自体のコンセプトが強いせいかと。
2014/12/28
いりあ
マルキ・ド・サド=原作、澁澤龍彦=訳、会田誠=絵という狂気のコラボレーション。この表紙の持つパワーを見てもわかります。作品自体は抄訳なので、ちょっと消化不良です。これでも十分にサドの世界観を垣間見ることが出来るとは思いますが。とはいうものの途中に挿入される美味ちゃんシリーズなどのイラストがその消化不良の不満を和らげてくれます。同時に収録されている会田誠についてのエッセイも興味深かったです。とりあえず、本作を読んでみて、どう感じるかで自分の性的な嗜好が異常かどうか確かめてみてはいかがですか?
2013/08/15
藤月はな(灯れ松明の火)
読友さんが読んでらっしゃったので興味を持って読みました。カバー絵の地面の図が変なのにしっくりきて不思議です。サド侯爵が紡いだ残虐な快楽に至上を見出す物語が文学青年の先輩も絶賛する澁澤龍彦氏によって秘して耽美に訳されています。それ故に自分の残虐なる心を揺す振られそうになるのでご用心を。澁澤龍彦氏の正常な性愛が男女による生殖行動だとすれば異常とされるフェチズム、マゾヒズム、サディズムなど、返答が難しく、考えることすらも大半は忌避されるであろう事に対して世の偏屈なる常識に対する冷笑も込めた考察も興味深かったです
2012/03/20
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