政治と思想 1960-2011 (平凡社ライブラリー)
政治と思想 1960-2011 (平凡社ライブラリー) / 感想・レビュー
ころこ
ダイアローグの語り口が率直で、内容云々はともかく分かり易いのは発見だった。デモと全く関係ない話も沢山しているのだが、概ねレビューの受けが良いのは、言葉の向こう側に人間性が浮かび上がっているようにみえるからだろう。印象に残ったのはデビューから「探究」くらいまでの自身の仕事の変遷だった。この経緯の最後の方で浅田彰がチラッと登場する。ふたりの仕事の厚みの違いを再認識する。他方でNAMや『批評空間』をやめた辺りの話は避けていて、実務能力が無い無責任な態度は残念だ。主語が大きいと、多弁なのは右派も左派も変わらない。
2023/01/21
またの名
デモをすればデモをする社会に変わるという屁理屈度の高い名句が背景に持っている思考と経緯を、明解に回答。60年安保闘争時デモ参加者に日当が払われてたとの非難が見過ごしてるのは、柄谷氏の述懐によれば休日以外で参加してる労働者の賃金がカットされるのは当たり前なので組合が積立金を用意していた、自明の理。しかし国鉄解体→組合解体→社会党消滅が順調に進んで(労働者サイドの組織が消えたらブラック企業蔓延は必然)その他有力な中間共同体も無力化された今、にも関わらずそれゆえに共同体の再創造は容易と言う。示唆する所は多い本。
2017/10/21
yamahiko
隠喩としての建築と格闘していた過去の自分を懐かしく感じました。こんなに柔らかな言葉を使う人だったのですね。氏の著書を読み返す際の補助線としたいです。
2020/01/11
呼戯人
柄谷の学生時代から現在にいたるまでの思想遍歴がやさしい言葉使いで説明される。異議申し立てをデモによって可能とする社会の在り方を模索する柄谷の巨人的な歩みが回想される。交換様式論に基づく彼の思考がカッコ付きの「社会主義」であること、ケインズ主義的な消費によって需要を掘り起こし経済成長を目指す社会を否定する柄谷の目指すところは、協働組合による支配のない社会主義なのだということがはっきりと認識できる。社会民主主義も福祉国家もはっきりと否定し、資本ーネーションー国家を越えてゆこうとする彼の思想が未来を拓く。
2018/04/29
OjohmbonX
だらだら長引かせるのはよくない、という感覚があるのね。NAMや「批評空間」をとりあえず解散する、原発はまず止める。惰性で駄目になるより、まずぱっとやめちゃってそれから考えるのがいいみたいな。もしかしたら経験則的なものかもしれない。(理由付けは後からどれだけでもできるしね。)本書の多くの分量を割いて、デモって何? 民主主義や国家や社会にとってどんな位置づけでどんな働きをするのか、ということが語られる。デモが何かの手段というより、それ自体が目的として存在するという認識は、デモへのハードルを下げるのに便利そう。
2012/03/21
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