百鬼園百物語: 百けん怪異小品集 (平凡社ライブラリー (789))
百鬼園百物語: 百けん怪異小品集 (平凡社ライブラリー (789)) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
内田百閒の話はまるで微睡の中で見た夢のようにとりとめがない。加えて夢のなかでは印象深かったのに起きた途端に忘却の彼方にあるというような、思い出したくともさらりとした味わいの物ばかりだ。そして私の情けないダメンズぶりに対し、女どもの軟体動物のように捉え所のない正体で自虐めいた滑稽さを際立たせる。やはり、この人の不思議な話は襟足や指先、着物の柄などはありありと浮かぶのに顔が一切、見えないのが印象深いのが個人的な感想である。
2013/08/13
HANA
百鬼園先生の怪異にまつわる文章を小説、随筆、日記の区別なく百篇選び出したもの。父や死者、動物、雷と題材ごとにまとめられているが、読んでいるうちにそれらが一続きになって一冊が一つの作品のような気になってくる。こういう独特の並べ方をされると百鬼園作品の新しい魅力が出てくるようで、流石は名アンソロジストと言ったところか。日記にこれほどの文章が含まれているのを、これで教えられた。それにしても何度も既読の作品が出てきているのだが、読んでいて全然飽きが来ない。むしろ読む度に新たな異界に引き釣り込まれるように感じる。
2013/06/18
踊る猫
再読。百閒のメガミックスとして面白く読める。百閒という人はなにをどう書こうが、小説として書こうが随筆として書こうが独自のヴィジョンを通して見た景色を見せるヴィジョナーだったのだな、と思わされた。スルスル読めるところは流石に手練のアンソロジストの為せる業。ちょっと齧るつもりで読んだのだけれど、一冊通して読み終えてしまった。これは是非未読の百閒作品も読みたいと思わされてしまった。読み終え百閒は基礎的に短編の人、エッセイストだったのだなと思う。短距離ランナーというか、ショートコントしか出来なかった人なのだな、と
2019/01/02
tonpie
小説・随筆・日記の形式を問わずに、百閒の「怪異小品」を、「百物語」の趣向で編みあげる。その夢日記が、小説と響き合って、冷え冷えとして怖い。次々に読むと、順番、内容、間合いが効いてくる。これはもう、名アンソロジスト東雅夫の「作品」といってもよいのではないか。 それにしても、怪談はいいなあ。怖い話を、誰かと「一緒に」味わうっていう感覚(錯覚)が、共同体の感覚を回復させるんだろうなあ。そういう意味では、「百物語」は理想なんだね。寂しがり屋の文学なのかも。
2022/09/10
あたびー
#日本怪奇幻想読者クラブ 百鬼園先生の文章は折に触れて読み返したくなる。この本は東雅夫氏が怪異味溢れる小品を集めてくださったので、寝る前に少しずつ読んで不思議な夢を見ようとした。何しろソラとぼけていて、「日記」と言いながら丸ビルをすっかり消してしまったり、イヤに女に執着する話も多い。ちょっと強面な写真が残る百鬼園先生が、どんな顔で猫や女に相対していたのか見てみたいと思う。そんなことを考えながらコロナ禍が収まったら神楽坂や、足を延ばして岡山をまた逍遥したいと思う。
2020/05/17
感想・レビューをもっと見る