可愛い黒い幽霊 (平凡社ライブラリー)
可愛い黒い幽霊 (平凡社ライブラリー) / 感想・レビュー
mocha
「怪異譚」というテーマで編まれた小品集。亡き妹の面影を探す詩、宗教の影響が色濃い話、遠野物語に通じる民話的なものなど…etc。怪談としての怖さはなかったが、幻覚が溢れるに任せたような作品には精神を病んでいくような怖さがある。帯に引用されている「幻想が向ふから追ってくるときはもうにんげんの壊れるときだ」という言葉が象徴的だ。解説にある賢治の怪異体験談の数々を読むと、やはりどこまでも繊細で鋭い感覚、自然と感応するアンテナを持っていた人なのだなと思った。
2016/08/29
HANA
宮沢賢治の諸作品中から怪異をモチーフにした作品を集めたもの。宮沢賢治と怪異というと合っていないようだが、実際その通りで集められた作品も怪異というより幻視と言ったほうがぴったりするものばかり。それでもこうやってアンソロジーで読んでいると、宮沢賢治の新しい魅力を発見できそうな気がする。個人的には一時期狂ったように宮沢賢治を読んだ時期があり、ここに収められている作品もその当時読みふけったものが多い。その為幻視家としての宮沢賢治という視点からアンソロジーを組んでくれたのは実にありがたい。読むとやはり魅力的だしね。
2014/07/22
藤月はな(灯れ松明の火)
最初、この本を見かけた時、「え、宮沢賢治がこのシリーズに?シビアでリリカルで寂しくて優しくのに・・・」と思っていました。でも思い返してみれば、この人の物語は誰の視点なのか、分からない語りや擬人化、山の怪などもあったのを再確認させられました。何度、読んでも異色過ぎる「毒もみの好きな署長さん」。無実な人が死罪になる前に「私が禁じていた毒もみをやっていたのは私だよ」と告白し、「毒もみ、大好き!」と宣言しちゃう署長さんの清々しさが妙な笑いを引き起こす。座敷童子については皆、見知った顔という記述に背筋がぞわっとする
2017/10/16
あんこ
岩手県民としては馴染み深い宮沢賢治。こうしてあるテーマに沿って纏められたものを読んだのは初めてなので、こんな一面もあったのかと思いました。土着の幻想文学。怪談と一言で言うには何となく違う。幽霊の章、幻視の章が個人的に好きでした。美しさと儚さと、何処と無く漂う不安感のようなものを感じます。あとはやはり、宮沢賢治作品に出てくる会話文は訛りをそのまま書き出しているので安心します。
2014/08/05
やいっち
幽霊がどうこうということより、賢治が幻視者だということが、東雅夫氏の編集による本書で知ることができた。彼による解説も非常に参考になった。「永訣の朝」では、兄賢治の妹へのひたすらな思いが表現されているようである。 一方、「手紙 四」では、まるでその舞台裏を明かすかのように、実は兄は普段から小さな妹に意地悪ばかりしていた。その妹が俄かに病気になり、兄は自分のせいで妹が病気になったとばかり、罪の意識に駆られて、「雨雪とって来てやろか」病床の妹に語りかけるのだ。
2018/08/01
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