たそがれの人間 (平凡社ライブラリー)
たそがれの人間 (平凡社ライブラリー) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
佐藤春夫氏と言えば、谷崎潤一郎氏との妻交換事件で有名だが、実録怪談編集の祖であり、自身も怪異に出遭っている人だった。そんな佐藤春夫氏のお人柄が分かる実録怪談&エッセー集。「化物屋敷」は読んでいても「これはいけない類のモノだ」と直ぐ、分かるような感じなので本当に怖い。そして「やけに明るい部屋は危ない」という話では父がインド旅行中に借りた一室で昼間に幽霊みたいなものにウワッと来られてゾッとしたという話を思い出しました。カタカナで全て翻訳された中国の狐の話は狐の最後の発言にちょっと切なくなって泣いてしまいました
2016/08/19
HANA
アンソロジー。佐藤春夫の数多ある作品群から、怪異に触れた作品だけを収録している。第一章は著者の怪談としては避けては通れない「化物屋敷」とその周辺を収録。「化物屋敷」については何度も読んだことがあるのだが、それに関連する作品群がこれほどあるとは知らなかった。幽霊屋敷の恐ろしさについて触れた一文が兎に角秀逸。二章は古典や民俗的な怪談で「山妖海異」が目を引くが、中国から蕪村まで内容は幅広い。三章は他作家との交流で怪談ぽくないが、足穂の事や鏡花の真贋論争で違う意味で興味深い。文豪に違う角度から光を当てた一冊。
2016/02/17
かもめ通信
5/6は佐藤春夫の命日“春日忌”だと聞いたから、積読山から引っ張り出して読んでみた。“化け物屋敷を転々と”と題された第Ⅰ部、“世はさまざまの怪談話”と題された第Ⅱ部に、お目当ての第Ⅲ部、“文豪達の幻想と怪奇”が続く三部構成の怪異小品集なのだが、期待通りやっぱりこの第Ⅲ部に収録された谷崎や鏡花、芥川や堀口大學や与謝野晶子ら文豪たちが実名で登場する7篇が抜きに出て面白い。とりわけ与謝野晶子の幽霊がトイレの外で待ち受ける(!)「永く相おもふ」が最高だった!
2016/05/06
名無し
準地元民としては、人生の残り時間を考えるまでもなく、さすがにいいかげん全集を読み始めないとまずいのだろうけれど。せっかく臨川書店版が図書館に開架されているのだから。
2023/07/22
qoop
〈怪異小品集〉と銘打たれた、東雅夫氏によるアンソロジー。著者自身の怪異体験を始め古典や民話に題を取った掌編など、怪異への興味が幅広いものと知れる。著者の怪異体験を代表する作品〈化物屋敷〉、生々しくも幻想的な妖怪譚〈私の父が狸と格闘をした話〉、日常の謎を扱った奇妙な手触りの〈道灌山〉、稲垣足穂との交流を書いた〈コメット・X〉、ある意味お手本のような〈永く相おもふ〉が印象的。
2016/07/07
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