新装版 寺山修司幻想劇集 (平凡社ライブラリー)
新装版 寺山修司幻想劇集 (平凡社ライブラリー) / 感想・レビュー
HANA
見世物、継母、陸軍病院、疾病、南方憧憬…。寺山修司のシナリオより実験、幻想味の強いものを選び出した一冊。天井桟敷の芝居は今まであまり目にした事は無かったのだが、このようなシナリオを読んでいるだけでも前衛というかあの時代の妙に昏くて熱い土俗を含んだような風を感じられるような気がする。ただこれらのシナリオは劇中に様々な仕掛けがあり、やはり一見に如かずという気はする。前衛的過ぎて一シーン毎の言葉遣いに惹かれるものは多いが、全体を通じてはわかりにくい部分が多いし。一度見てみたかったが、今となっては無理だろうなあ。
2018/02/02
ふくしんづけ
〈母さん、おまえを眠ってしまったんだ。ここにあるのは皆、あたしの夢だ〉戦後幻想文学ってこういう感じなのだろうか。どこがとはハッキリ言えないが、根底にあるものが似通っている感じ。時間を経て、現実から〝余って〟しまう男とか。断裂する時間の幅と共に、空間的にも大振りなものが多い印象。劇の中の事象としても、舞台の外との隔たりを取り去っていく。そして台詞。滑稽に、あくまで劇の面白みとして、キャラを生かしつつ、真理である。嘘がない。〈ぼくはただの事実にすぎない…〉悲しい、情けないのに、可笑しい。
2021/09/14
SAT(M)
前衛演劇人であった寺山修司の戯曲集。真っ暗な劇場の中、マッチの明かりだけで上演される作品や、劇場のある街を舞台にして展開するメタ的なストーリーなど、その場ではないと体感できない要素をふんだんに含んでいます。小説と違い演劇なので、シナリオだけでなく演出や、劇場の空気もふくめて味わわないと作者が表現したかった所にまで至ることができないんだろうな、というもどかしさを感じながら読了。もう少し早く生まれて、リアルタイムで寺山演劇を「体験」したかったな…。
2021/12/10
九杯目
ウテナのJ・A・シーザーがこの作品集にどんな音楽をつけたのだろう…と気になった。台詞だけでも鬼気迫る雰囲気。エロと耽美が混じる危うい言葉遣い。『レミング』の王の焼豚の作り方を喋るところにうまそうだな…と思いつつ、兄と妹の狂った会話に通じるところも感じてしまった。崩壊したバランスの中に作品がある… 役名もまた狂気を感じるものが多く、読んでいてめまいがしてくる。これ上演した時どんな感じだったんだろう…
2023/03/08
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