甲骨文の世界: 古代殷王朝の構造 (東洋文庫 204)
甲骨文の世界: 古代殷王朝の構造 (東洋文庫 204) / 感想・レビュー
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ナイフ状の筆記具で文字を刻んだ亀甲(腹甲)や獣類の肩甲骨に熱した金属棒で穴を開け、その周囲のひび割れ具合で吉凶を占う儀礼は、殷王朝の神権政治を支えたという(割れ方を操作した節もある)。洪水の多い黄河流域に生きる古代の人々はランダムな自然にサイクルを読み、見えない生命=霊の集合体に表象して受け入れ、生活リズムを作る。が、自然のランダム性は人間のリズムを上回るゆえに、災厄を先取る卜占が必須となる。漢字の起源である甲骨文字から古代社会を仮説推量する著者は、甲骨に呪を刻み未知を支配する霊と交流するその生活を読む。
2020/12/21
の
中国最古の王朝、殷で使われた甲骨文に視点を当て、当時の王朝の政治を明らかにしようというもの。まず驚いたのは、中国では20世紀に入るまで「甲骨文」に興味は無く、叩き割って露店の雑貨屋で怪しげな薬として売っていたこと。成程、甲骨文もその考古学的な価値が認められなければ、ただ単に漢方薬としての意味しか持たないのか。内容としては高校の世界史で書かれていたような、王族と占い師の宗教的な統治体制の一つとして亀甲を焼いて出来たひび割れを神意とした記録集。それでも、ここから漢字が出来たのかと思うと感慨深いものがあります。
2011/04/21
ヴィクトリー
「金文の世界」が「金文から読み解く周王朝の歴史」であったのに比べると、こちらの方が図例も多く、タイトルに近いかもしれない。また「金文」の方は拓本を載せていたので読取りにくい箇所もあったが、こちらは書き写したものを使用しているので読み易い。占いに用いたものである事から定型的な表現が殆どで、それを結構な量読む(本文中に今の漢字の書き下し文有り)ので、読み終わる頃には何となく甲骨文が読める気になってくるのが嬉しい。
2012/07/10
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