至福のとき: 莫言中短編集
至福のとき: 莫言中短編集 / 感想・レビュー
白義
都市を舞台にした小説が多く、莫言作品の中でも軽みと滑稽さが目を引く作品が多い。侘しき退職老人小説としてもホラーとしても読める「至福のとき」や法螺に次ぐ法螺の連鎖が世界観全体を馬鹿馬鹿しきものにしている「宝の地図」なんかは読みやすい。「飛蝗」は蝗害と闘う一族とその青年の昏い閉塞、狂気が文章により渾然一体となったマジックリアリズム作品。「沈園」はこの五編の中ではおとなしめの恋愛小説。傑作は「長安街のロバに乗った美女」で、ロバに乗った美女たちを追いかけるただそれだけのアホらしさ。あるいはSFかもしれない
2012/10/27
星落秋風五丈原
赤いコーリャンの原作者短編集。「至福のとき」も映画とは全然違う「長安街のロバに乗った美女」「宝の地図」「沈園」「飛蝗」収録。
2002/11/04
ヴィオラ
なるほど、ラテンアメリカ作品を読んでいた時とどこか感触が似ている。具体的な「マジックリアリズム」の定義は未だに良くわからないけれど、なんとなく感触はつかめてきたのかも。個人的には表題作や中篇「飛蝗」より、不思議なエスカレートの仕方とトボケタ最後が楽しい「長安街のロバに乗った美女」や、いきあたりばったり具合が楽しくて、でも最後なんだか綺麗にまとまりました的な「宝の地図」が好き。
2012/10/17
ミコヤン・グレビッチ
キャリア初期の1987年に書かれた中篇「飛蝗」と、1999年の短篇4本からなる莫言の作品集。イナゴの大発生を背景にした、土と血の臭いが強めの物語でありながら、そこはかとないユーモアも漂う「飛蝗」がとても良かった。短篇の方は全般にあっさり味だが、「宝の地図」の人を食った落とし方が秀逸。著者自身の解説によると、この話は着地点を決めずに書き始めたとか。中国の文学には全然詳しくないが、共産主義国で政府に公認されている作家など読む価値なしと思っている人がいるなら、それは食わず嫌いでもったいないよ、と教えてあげたい。
2020/02/19
王天上
表題作はぴんとこなかったけど、あとはとても面白く読めた。「宝の地図」が妙なドライブ感があって一番好き。マジック・リアリズムが好みのひとにおすすめです。
2013/01/22
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