滑稽な巨人: 坪内逍遥の夢
滑稽な巨人: 坪内逍遥の夢 / 感想・レビュー
テイネハイランド
図書館本。シェイクスピアの翻訳で知られる明治の文士・坪内逍遥の評伝。逍遥が早稲田大学のドン(文学部の創始者)というべき人物だとは知りませんでした。津野さんは早稲田文学部出身で演劇にも詳しく、逍遥の評伝を書くのはぴったり。この本では、逍遥の教育者としての側面に光を当てた「第四章学校をつくる」が読み応えがありました。「頑として動かぬ保守的な尊皇愛国の人」であった逍遥が、教育勅語を金科玉条とする上からの画一的な道徳教育に異を唱えて、自身が関わった早稲田中では実践倫理にこだわったというのが興味深かったです。
2017/03/04
星落秋風五丈原
近代文化の改革者であったにもかかわらず時代の理解には恵まれなかった不遇の文学者の生涯を鮮やかに描いた評伝。
2006/03/07
quabex
逍遙のシェイクスピア作品全訳のことを知りたく思って読み始めた。しかし「あとがき」によると、逍遙は、成功(その1つが『シェークスピヤ全集』単独訳)よりも失敗(省略)にこそ、自分の本領が発揮されていると考えていたらしい。著者の関心も失敗の方に向けられ、「逍遙はその成功によって私たちから遠く、その失敗によって私たちに近い」という。だから本書には沙翁翻訳談義はほとんど出てこない。そうと知っていたら、本書を読まなかったかも。とはいえ、「私たちに近い」滑稽な人生は、僭越ながら微笑ましく感じられた。読んでよかったかな。
2020/12/15
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