ミステリと東京
ミステリと東京 / 感想・レビュー
ぐうぐう
ミステリ小説を東京という都市の視点から眺める。すると不思議なことに、違った印象を受けるのだ。『理由』や『東京下町殺人暮色』、そして『燔祭』を取り上げ、東東京にこだわりを持つ宮部みゆきを川本三郎は「かつての下町の共同体のなかでは起こり得なかったような新しい都市型の犯罪が、他ならぬ下町で起こっている。宮部みゆきはそのことを書かざるを得ない。自分が生まれ育った土地は、いつからこんなに変わってしまったのか。いつからこんなに荒涼としてしまったのか」と解釈する。(つづく)
2022/05/12
ばんだねいっぺい
推理小説を東京という都市の評論として読んでいく趣向。取り上げた小説中では、犯人の逃亡・潜伏先や、地方出身者が最初に住む地域に共通する部分あり。作家ってすごいなーと感服。優秀なブックガイドとしても機能する本。
2017/06/06
rakim
夢を持つ人の昔から変わらぬ東京志向は、徒に人が集中し紛れ、見方を変えると挫折や欲望が渦巻く街にもなること。街自体の佇まいも超近代的であったりレトロな商店街であったり歓楽街であったりと雑多な風俗が混在している。だからこの本はミステリーの人物が溶け込み背景にもなるという都市論でもあります。とても面白く読了し、読みたいミステリー本が増えてしまいました。文庫本になったら良いのにと思う一冊。
2018/04/30
子音はC 母音はA
(東京)というものに焦点を当てたミステリの本は幾つかあるが、なかなか網羅的に扱っており、しかも比較的新しい時期に刊行されたミステリにも光を当てている。ただのあらすじ本ではなく東京にまつわる思想を踏まえた重厚な書籍で都市犯罪の源泉を詳らかにしていってる。
2015/08/23
chisarunn
ミステリ小説の中の、東京という街の書かれ方について焦点を当てた論。時代は少し前の東京、戦前とか前のオリンピックの頃とかが多い。こんなに東京という街そのものを書き込んでいるミステリが多いなんて思わなかった。この中で取り上げられた本を再読するときは、じっくり「東京」を味わいながら読んでみたいものだと思う。もちろん、未読のものは「読みたい本」に上げなくちゃ。
2021/06/17
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