東京日記2 ほかに踊りを知らない。
東京日記2 ほかに踊りを知らない。 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
『東京日記』1の感想にも書いたが、川上弘美さんのこの一連のシリーズは多分に俳諧的だ。まず、蕉風俳諧の理念の1つである「軽み」。本書では、もう徹底して隅々までが「軽み」の境地にあるといっていい。次には『三冊子』にある「松のことは松に習え」といった、自己をも客観視する観察眼。これも合格。最後は、やはり蕉風の俳諧理念「高悟帰俗」(高く悟りて俗に帰れ)。電話機の故障に「ほかに踊りを知らない」からといって東京音頭を踊るくらいだから、「帰る必要もないほどに」俗。さて、「高く悟る」―これだけが最後に残されたハードルだ。
2012/12/24
あつひめ
私は埼玉県人だけど…なぜか東京音頭をスラスラ歌えてしまうことに気づいて…一人動揺してます(笑)前作から3年経っているそうだけど、数日前に前作を読んだから3年という重みをイマイチ感じずに読んでしまった。時は人を変えてしまうこともあるようだけど、川上さんに限っては大きな変化もなく興味のアンテナも相変わらず健在で、面白く読ませてもらった。桃の香りを堪能したくて晩御飯を作らなかった話は、ちょうど今の季節の話で桃の香りもごちそうであることを実感した。次の日記も3年経っている。でも私は引き続き読んでしまう。楽しみ。
2014/07/23
おいしゃん
変わらぬ面白さに、うっとりする。近所の赤ちゃんが言葉を覚えていき、もはや赤ちゃんではなくなったことを、ひとりヤリイカをつまみにお祝いする日記や、部屋にヒヨコが100羽くらい走り回る夢を淫夢かと考え込む日記など、余計な言葉を削ぎ落とした最小限の文字で、面白さが濃縮されている。読んでないのはあと1巻のみ。さみしい。
2017/11/26
あも
川上弘美の東京日記第2弾。ほんわかした。川上さんはとにかくよくびっくりしている。省みるに、自分は歳をとって動じなくなったのではなく、感受性が鈍っただけではないかと思ってしまう。自身が年賀状を発注し忘れたことに気付き、びっくりしたとしくしく泣き、編集者との待ち合わせの喫茶店が閉店していておろおろ。吉祥寺で買い物をし、下北沢で映画を見て、筍を煮て食べ、お酒を飲む。些細な日常の一コマ一コマに驚き狼狽し、心揺れる。ぜひ、こんな歳の重ね方をしたいと思った。そして川上さんはやっぱりかわいい。←これたぶん毎回言います笑
2016/11/08
めしいらず
再読。その状況に当てはまる"シュール"という言葉が思い出せない著者。普段から意識せず使わない言葉だから。著者の一側面であるシュールな作風からすると一見意外に思えそうだが、私は逆説的に著者への信頼度がより高まった。すなわちシュールな物語は意気込んで狙って書かれるべき類いではないということ。意識したそれは途端に嘘臭くなる筈だから。意外性を狙う探偵小説以外ならどんな小説にも言えるのではないか。また著者の年始の目標は2年続けて靴下を裏返しに履かないこと。靴下はおろかシャツさえ表裏や前後を間違える私は他人事でない。
2019/08/07
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