緑のさる
緑のさる / 感想・レビュー
おさむ
山下さん3冊目。野間文芸新人賞の今作品も、現実と夢の世界を行ったり来たり。一つ一つの情景はあたかも映画かテレビの映像みたいで、それがフラッシュバックのように「脈絡なく」続いていくような感じ。昔だと理解不能の一言で投げ出していた類の作品なのだが、どこか心に引っかかる部分があってつい読んでしまいます。その辺が芥川賞を取った所以なのかなあ〜
2017/01/28
michel
★3.8。初読作家さん。気鋭演劇を観た感じ。幻想、現実、過去、未来…境界線に惑う。場面転換が多過ぎて惑う。キンバラと、ただ一方的に昔あった不思議を乗せ合っていくだけの会話(?)の場面、あの感じ好き。まさしく”気鋭劇作家”だ、この作品の主題は何…何か分かるような分からんような…と読んでいくと、最後は畳み掛けるように腑に落ちさせてくれる感。※保坂和志さんの『プレーンソング』を先読みすべし。それがちょい登場してから”ノジマヨウコ”があの”よう子”と同一のような気がしてしまうが深読みし過ぎなのかな。
2018/09/16
ぽち
この本を読むひとは大半がわたしとおなじく保坂ファンなんだろうと思ってたら割とそうでもないみたいで、なんとなくこの本を手にとって読み始めたひとが「わけわからん」とすぐに投げださないように、わたしなりのこの本のおすすめの読み方を。まず7章「ぎそくの夢」から読み始めてみてください。そしてあたまにもどってあとはふつうに読みすすめてみてください。さいごの章に至るころには十全にこの本の文章を堪能できるようになっていると思います。あとYOUTUBEの渡部直己×佐々木敦対談をぜひ。
2015/01/16
ハチアカデミー
C 現実を超え、夢と想像の世界に迷い込む現代のセンチメンタル・ジャーニー。意味や思惑を感じさせない、良い意味で平坦な文章を書くのが上手い。連想によって物語がスライドしていくため、私小説のような出だしからは想像できない物語が展開していく。雰囲気としては田中小実昌にちかいのだが、コミさんがもつ滑稽さと、その奥に隠し持つ闇のような深さが感じられなかったのが残念。作家としての可能性、面白さは感じる。こりに凝った本作りには好感が持てる。ただ見出しが柱のみなのは分かりにくい。
2012/08/29
Iko
「ギッちょん」で第147回芥川賞候補になった山下澄人の2012年8月現在唯一の単行本。岡田利規や戌井昭人、古くは安部公房もそうだが、演劇畑の人の小説は、小説畑の人の小説にある<おやくそく>をやわらかく崩している。夢と現実、物語と物語でないもの、わたしと他人、詩と小説、現在過去未来、この小説では一行で反転し、反転したことすらそのうちどうでもよくなってしまう。ラテンアメリカ文学にも似た感触をおぼえるが、この人は過剰なラテアメ信者でもなさそうだ。だが現時点では、まだこの人の才能は開花していないと思う。
2012/07/15
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