新訳 説経節
新訳 説経節 / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
お恥ずかしい話し、皆川博子さんの「おぐり」や森鴎外氏の『山椒大夫』で概要を知っていたものの元ネタである説経節については知りませんでした。蜷川氏の『身毒丸』においては観てもいない・・・。現代語訳で訳された説経節は読みやすいですが、『小栗判官』の小栗の傲慢さや『しんとく丸』の継母の呪詛に顔を覆うしかない。薬売りに恋文を託し、比喩が多すぎて女官たちに笑われた手紙を読んで自分への恋文と知り、恥ずかしがる姫君って典プレなんだな。そして因果応報とは言え、報いが地に埋めて生きたまま、首から上は鋸引きとか、えげつない。
2017/05/03
syota
『山椒大夫』はともかく『小栗判官』『しんとく丸』は初めて、というより説経節というジャンルがあることさえ知らなかった。現代語に訳した伊藤比呂美さんの力も大きいのだろうが、語り口の平易さ、テンポの良さ、途中のお涙頂戴、最後の大団円と、大衆向け口承文芸としての特徴がよく表れている。別々の話で同じ場面が使い回されているのも、口承文芸ならでは。聴き手は主人公が散々苦労する場面を日常の我が身と重ね合わせて共感し、最後の勧善懲悪に喝采したのだろう。まさに日本人好み。荒唐無稽であっても思わず引き込まれてしまう。
2018/05/20
かふ
伊藤比呂美の解説が素晴らしい。「そうなんです。説経節の女たちはみんな私だった」「しんとく取って肩に掛け(病気になったしんとく丸を担いで乙姫は彼の再生の為に立ち上がる)」。「山椒大夫」の安寿は勝ち気な姉さまで、鴎外や吉田修一の安寿とは違う。厨子王を逃がすのも鎌を持って軟弱厨子王に切りかかり、チャンチャンと鎌を交叉させ別れの決意を示した。ただ別れたり入水したりしたのではない。だから拷問も黙秘を貫いて拷問死したのである。あっぱれ!「妹の力」と言われているものなんだけど手柄は男の方に縁の下で苦労するのは女たち。
2020/10/11
リッツ
波に揺さぶられるように読了。読み始め日頃読み慣れない文体になかなか馴染めなかったので、試しに数頁、声に出して節をつけ唄うように読んでみれば,アララ後はつらつらと一息に。濃い!一応知ってはいる三編の物語。女が強く逞しく、それによって、くじけ弱い男が救われるのが何より抜きん出ているのは伊藤比呂美さんの訳だからか?こんなお話だったっけ?と目を白黒、悪いやつらはほんとに酷い、しかし持ち直した男の復讐も容赦ない。残虐さにグエ~となりながらも、情けや施しの自然さ祈りと諦めが繰り返されるフレーズに乗って心に漂う。
2015/08/09
ミホ
神仏の教えと共に生きた人々の姿が、時には残酷に、時には慈悲深く、生き生きと描かれる。現代文に訳されているけれど、語り物ならではの味も濃く残っていて、読んでいるのに聞いているような不思議な感覚で、楽しく読了できました。
2016/01/18
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