猫町
猫町 / 感想・レビュー
ケイ
こんなところにもホレーシオが登場するとは。。。 Hamlet は怖ろしや。さて、「私の現実の経験した次の事実も、所詮はモルヒネ中毒に中枢を冒された一詩人の、とりとめもないデカダンスの幻覚にしかすぎないだろう」という文章が読書中にずっと引っかかり、物語としてではなく、中毒者のみる風景という色が付けられてしまった。しかし、その後に改めてもう一度読むと、この挿絵の効果もあり、なんともゾッとする世界を見せられたように思う。でもやっぱりガリバーなのかな。
2022/10/03
がらくたどん
ねこの日だそうで(=^・^=)萩原朔太郎というと屋根の上で尻尾の先に三日月を引っかけて啼きかわすニャンコをとりあえず思い出すのだがこちらは詩人朔太郎の数少ない「散文詩風な小説」。三半規管の病気(いやいやヤバい習慣のせいだと思うぞ)で超方向音痴になった主人公が迷い込んだモダンな街は道行く誰もかれもが「猫」だった!びっくりしたにゃあ!(やや理屈ガチなオチもある)というお話。「猫」が出るまでの長い溜めが心拍数を上げる。このテキストに金井田さんの版画が付く事で迷い込み度・クラクラ度が増幅される素敵な作品だにゃん♪
2024/02/22
かりさ
いつもの道もいつもの景色も、ふと裏側の世界に迷い込むことがある──旅先で幻燈の中に導かれたその町は、どこもかしこも猫、猫、猫だらけ。それは夢か現か化かされたのか。その不思議な事象が夢ではないことを知っている。幻想と怪奇を読み視る美しさ。
2021/08/06
tosca
萩原朔太郎の「猫町」は既読だが、絵が入るとこうも印象に残るものだろうか。金井田英津子氏の挿絵が素晴らしい。以前に違う本で読んだ時には短い作品だしサラッと読んだ感じだったが、絵と併せてじっくり読むと、この「猫町」はヤバい。この時代にえ〜っ!と思うほど、ドラッグでハイになって幻覚をつぶやいていると思われる。実際に精神科医でもあった朔太郎は薬物や幻覚に並々ならぬ興味があったようだ。「阿片は道具が面倒だから注射や服用で済むコカインやモルヒネを使う」という文章、創作の一部と思ってたけど違うな、猫がいっぱい見える訳だ
2022/06/28
booklight
朔太郎初読み。こちらが原典なのだろうが、思い出すのは村上春樹の1Q84。猫町の不穏さがよく似ている。昭和初期らしく麻薬の使用が日常で、より非日常との境目が薄め。三半規管がどうのと変に理屈っぽいのも古めかしいが、それでいて迫ってくるものは今も変わらない。日常の風景が突然非日常に見えて、強烈な疎外感に襲われる。うすうす感じているこの感覚を作品にして、さらに版画までつけて読めるのはなかなか楽しかった。版画の異世界感はユーモラスでさえあったが、1Q84の世界を引きずっていると、もう少し不穏な世界が感じられる。
2022/12/11
感想・レビューをもっと見る