新書723桜は本当に美しいのか (平凡社新書 723)
新書723桜は本当に美しいのか (平凡社新書 723) / 感想・レビュー
井月 奎(いづき けい)
桜の持つ幽玄さと美しさを「和歌」「短歌」「小説」「歌謡」から論じています。 日本的美意識の発露である『万葉集』になぜ桜の歌が少ないのか、そしてそれがなぜ『古今集』になると爆発的に増えるのかもすとんと分かります。 折口信夫が教えてくれた桜花の意味、「農耕の寿ぎとしてのもの」であることがあまりにも生活と信仰に根付いているために、それが美しいこと、稀有なるものであることに気が付いていなかったのです。そのほかにも多々すばらしい気付があり、実に良書です。
2021/05/15
かふ
桜にまつわる歌(和歌からJポップまでのサクラソング)をたどり日本の文化論という体裁になっている。桜は「神」を意味する「くら」に穀(物)霊の「さ」が付いたもので農業などの吉凶を占う木とした説。桜は花を愛でる以前は祈りの花だった。万葉集では、主に山桜が挽歌として詠まれたのだが平安になってから貴族が都に持ち帰って相聞歌などを詠んだ。桜の形態(霞と散る桜)から擬人化され、滅び(雅の追想)の美学と自己対峙(西行は私小説か?)と定家になるとメタフィクションとして過去の理想の歌から桜を形作っていく。
2021/03/28
双海(ふたみ)
好きな現代歌人水原さん。期待して読んでみたものの・・・。「思想性に欠ける和歌」(四十頁)という箇所、残念に思う。本居宣長大人の和歌を批判する(私には憎悪の塊のように感じた)ところもえげつない。もうこれで現代歌人で信頼できる人はいなくなった。日本もほんとうにくだらない国になった感がある。 ※2015年8月14日追記:もう一度読み返してみたいと最近思いました。
2014/10/03
さき
桜は本当に美しいのか、という問いのもと、古代から近現代までの文学における桜の役割を分析している。特に古今和歌集から新古今和歌集までの桜文化の変容は興味深かった。軍国主義にそこまで桜が利用されていたとは私は知らず、ある一定の年齢層には桜に対する抵抗感があるのでは、という筆者の論には驚きだった。筆者の、はじめの問いに対する結論は得られなかったが、古代から現代に至るまで様々な役割を担わされてきた桜を思うと、そういった文化の流れを踏まえた上でやはり桜は日本人に特別な花であるように思った。
2021/04/07
夏野菜
水原紫苑著の新書が平積みされていたので衝動買い。桜が特別な意味を付与され、花イコール桜となったのは古今集以後であると論証し、桜がいかに作られた文化装置であるかを喝破していく、かに思われたが、古今集以後の記述は文学史上で重要なもので桜を取り入れていたものをひたすらに紹介していく。いやはや、和歌のみならず、能や中世文芸にも知悉している著者らしく、その解説はなかなかに面白い。しかし、眼目は近現代短歌。穂村弘はわかんなかった、など率直な意見がいい感じ。結局、書名の問いには全く答えていない(笑)
2014/04/07
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