死と向き合う言葉: 先賢たちの死生観に学ぶ
死と向き合う言葉: 先賢たちの死生観に学ぶ / 感想・レビュー
ろくせい@やまもとかねよし
死を不条理で捉えることが主題。評論家呉智英さんと文学者加藤博子さんの対談本。古代ギリシャ哲学、儒教、宗教から展望する死生観。カミュ、サン=テグジュペリ、エンデ文学から考察する人生の価値と幸福。これらを、ニーチェとドフトエスキーを起点に、キリスト教、原始仏教、日本仏教、日本土着信仰に重ねるながら議論を深め、終盤自殺における自己犠牲から死を考察。死は個人のものとする現代。しかし否応なく突きつけられる自己の一回性、非代替性、非再現性は、古来理論化した生と死の不条理な連続性からの死の理解に回帰できると提案するか。
2021/04/14
kokada_jnet
呉智英が、いままでの本においてあまり記していなかった、死にまつわる話題を。名古屋での弟子筋にあたる文学・哲学研究者と語りあう対談本。あまり知らない話ばかりで、非常に新鮮な本であったが。深沢七郎の「反知識人性」がフェイクではないかと谷川健一が見抜いた(?)という話は、またも、その話ですかと思ってしまった…。
2021/08/17
smatsu
基本的には呉先生のファンが読むような本で、深みのある読み物ではない。けっこうお年を召されたということもあって敢えてこういうテーマにしたのだろうか?呉先生の得意な所はやはり大衆社会批判やその中での知識人の在り方、生き様みたいな話であって、死というような個人的実存的な側面の強いテーマはどちらかというと苦手なのではないだろうか。「未だ生を知らず、いずくんぞ死を知らん」と。完全自殺マニュアルへの批判を書いていたエッセイ(『犬儒派だもの』所収)は昔読んだけど呉先生独特のキレと味わいがあって名文だったと思う。
2023/01/03
Go Extreme
この不条理なもの 呉智英 「死への問い」を問う:認知革命と死の恐怖 人間の有限性 平塚らいてうの悟り体験 悟りとは何か 自殺幇助の是非 物語で描かれる死:カミュ サン=テグジュペリ ミヒャエル・エンデ ファンタジーをどう支えるか 死後に継ぐもの:ニューチェとドストエフスキー 永劫回帰 死に者の物語 安楽死の問題 イザナギ・イザナミの話 上田秋成 小泉八雲 柳田國男 有限性の克服 宮澤賢治 捨身 霊魂のつらなり:折口信夫 熊谷直美と平敦盛 深沢七郎 コロナ禍に 遺される言葉
2021/04/25
世界神経症
浅学菲才の小生でも面白く読めた。特に四章「捨身」以降の民俗学的な生死にまつわる話が面白い。前章の近代小説や社会問題に若干飽き飽きしだすところに、突如そうした話題が密度高く投入されるので、これが清涼剤的に作用して気持ちがいい。 強いて気になることを言えば、この呉という人はどこか剽軽なところがあって、その顕著な例としてゲイのことを「モ~ホ」と呼んだりする箇所が後半頻出する。そういう「健全な」性格が本書全体の判りやすさ、噛み砕かれた感じを生みだしているのなら、ちょっと悔しいな。
2022/06/23
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