定本 〈男の恋〉の文学史: 『万葉集』から田山花袋、近松秋江まで
定本 〈男の恋〉の文学史: 『万葉集』から田山花袋、近松秋江まで / 感想・レビュー
gachin
大抵の恋愛の失敗パターンは先人に網羅されていた。歴史研究の書としても本書の指摘は面白かった(自然発生的な多起源を想定せずに単一起源を想定してしまったり、歴史を同時代的に均質な集団の経時的移り変わりと認識してしまったり、前の時代のことを今とはコントラストのついた違うものと認識したり)。平安期の原文に訳語が無かったのは辛かったけど。「性欲自体が下劣なのではなくて、性欲が下劣な人格を顕にするから」というのには膝を打った。あと、男の感傷は、惚れてる女の人というフィルターを通すことで成り立ってるかもしれないと思った
2019/10/16
Lieu
学術書だが大変面白い。氏の文学論のベストだろう。男の片恋は王朝時代の文藝には描かれたが、徳川時代の文藝にはほとんど描かれなくなり、近代にある程度復活するが、今なお偏見があるとする。前半が徳川時代まで、後半が明治以降を扱う。田山花袋と二葉亭四迷の論が特に面白かった。そして、そろそろ源氏を読まねば、と思った。
2021/04/15
翰林菩薩
メモ:女に恋い焦がれる主体的で片思いな「男の恋」の頂点は、『源氏』・『狭衣』・『夜の寝覚』で達成される。近世になると仏教・儒教倫理の影響による女性蔑視観を下敷きに、女の誠実な恋→それを受け入れる男という色好み的な構造がメインとなる。近代=明治以降は、西洋恋愛思想が輸入され、二葉亭の『浮雲』、『其面影』、『平凡』・花袋の『蒲団』・秋江の「別れた妻」連作等によって、再度「男の恋」が復活する。
2017/09/27
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