古代憧憬と機械信仰: コレクションの宇宙 (叢書・ウニベルシタス 513)
古代憧憬と機械信仰: コレクションの宇宙 (叢書・ウニベルシタス 513) / 感想・レビュー
内島菫
本書を読むと、クンストカマー(古代の彫像≒自然から当時の最先端の自動人形や時計といった人工物まで、あるいは異国の珍品等が収集・分類され陳列された施設)が果たしていた古代憧憬と機械信仰との間の緊張感ある繋ぎ目という役割は、巨大ロボットにも当てはまるのではないかと思えてくる。技術と美術、あるいは実用と美もしくは遊びがはっきりと分けられる以前は、技術/人工物の理想の未来はエデンの園のような始原にあるという循環的な時間は、例えば生き物=自然=始原のような巨大ロボット=技術/人工物エヴァンゲリオンが、
2022/02/13
dilettante_k
原著93年。16~18世紀のクンストカンマーの盛衰を通じて「自然―古代彫像―人工物―機械」を定式化。機械信仰が反自然ではなく自然の模倣、回帰に根差すことを明らかにする。さらに、機械信仰は自然のうちの遊戯性(無秩序性)まで備えていくが、産業革命を経て、次第に「有用性」が前景化する。加えて、18世紀のヴィンケルマンとピラネージの登場により、クンストは「芸術」と「技術」へ分化。機械信仰は反自然に措定され、恐怖と憎悪の対象となっていく。バロック期のコレクションに通底する、視覚優位の論理体系の変遷を辿る貴重な一冊。
2014/02/08
あかふく
自然物ー古代の彫像ー人工物ー機械という歴史の鎖がいかにしていつもつながれあっていたか、またいかにして千切れてしまったかということをクンストカマーを中心にして論じる。末尾ではフーコーを批判しながらテューリングにクンストカマー的な発想が復活してきていふことを確認する。人間の造形力と自然の造形力が区別されないことから、神の記念物としてある種の岩や風景が古代の彫像や人工物とつながりを持ち、また神が動物を作ることと人間が機械を作ることがつながっていると考えられた。
2013/06/28
毒モナカジャンボ
16世紀あたりから現れ18世紀に解体へと向かうクンストカマーの歴史。自然-古代物(彫像)-人工物-機械という連鎖を表現する分類・展示法により、クンストカマーは創造主の自然と人間の手になる加工物に連続性があることを示した。視覚による世界の把握を企図したミクロコスモスとしてのクンストカマーは、ベーコンに巨大なユートピアを夢想させた。遊戯的なものによる秩序からの逸脱すら自然の理法が存在することの証明となる。だが後年、実用主義の隆盛により上述の連鎖は解体され、芸術は自然より自由となり、博物館へと発展解消する。
2019/05/14
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