猶予された者たち
猶予された者たち / 感想・レビュー
梟をめぐる読書
「家、家、家!」と鸚鵡が啼くアパートを舞台に、不動産としての“家”の相続に固執する人々を描く「結婚式」。鏡や写真を中心に、あらゆる自己愛的な道具の所持が法によって禁止された国の物語「虚栄の喜劇」。おのれの生きる年数があらかじめ人々の名前に刻まれていたら…というIfの世界で展開される「猶予された者たち」。小説的でない、現実に生きる人間たちの行動原理のせせこましさを暴露し、そこに一片の人間愛も感じさせないあたりは流石カネッティといったところ。ネットが発達し、世界的に群衆化傾向の強まっている今こそ彼の再評価を。
2012/01/13
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