教養のためのセクシュアリティ・スタディーズ
教養のためのセクシュアリティ・スタディーズ / 感想・レビュー
カモメ
セクシュアリティについて本質主義と構築主義が対立して取り上げられているが、本書では両方とも重要であるとし、世間の性にまつわる規範を問い直している。そこでは性別の判断基準、同性愛の多様性など、今まで定義されてきたものの脆さがうかがえる。1892年には異性愛は性欲を再生産から切り離しており「異常な性欲の現れ」と論じていたのが興味深い。日本ではゲイの病気とされたエイズについては、サハラ以南のアフリカでは男女不平等の中で男性よりも女性に感染者が多かった。様々な歴史や世界の中での性の捉えられ方が興味深かった。
2021/05/17
ひつまぶし
セクシュアリティについて知りたくて、まずは教科書的な本を読んでみた。性別というのがいくつあるのか分からないが、どんなに気をつけても性別を想定してはじめる時点で常に後で気づくことになる気がする。突き詰めていくと根本的な人間観が問われるのではないか。一人一人が幸福を追求するためにはセクシュアリティは多様であるべきだが、問題は他人のセクシュアリティを貶めようとする者がいることだろう。ローティの言うように「残酷さ」の回避を目指すリベラル・アイロニストという立場が結局そのような人間感、生き方であるように思える。
2024/05/17
ぴーまん
総論的でめちゃくちゃ勉強になった。セクシュアリティ研究に限らず、「本質主義」(人間のある性質をホルモンバランスといった生物学的次元から説明する考え方)と「社会構築主義」(社会、文化の面から説明しようとする考え方)の対立は、精神医学を含め、医療のいたるところに見られる。セクシュアリティに関する研究とその当事者が築き上げてきた歴史は、セクシュアリティという、生物学的性質に影響されつつ社会的にも構築されてきた人間の性質を、人間が社会の中で捉えなおすことで能動的に変容させてきたという点でも貴重な実例だと思う。
2019/11/19
まあい
セクシュアリティ研究の「現在」が分かる1冊。最新の調査データや情報を使っており、とても勉強になる。いわゆるLGBTの話だけでなく、性暴力や性の商品化などジェンダー的なトピックがセクシュアリティとどう関連しているか、という点についてもバランスよく記述されている。手元に置いておいて損のない本。良い教科書。
2019/03/08
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