([ひ]1-1)文豪てのひら怪談 (ポプラ文庫 ひ 1-1)
([ひ]1-1)文豪てのひら怪談 (ポプラ文庫 ひ 1-1) / 感想・レビュー
ハイランド
吉田悠軌氏の「一行怪談」に触発され、どりゃショートショートの怪談でも読んでみるかと図書館から借りた一冊。都筑道夫氏の「長い長い悪夢」は本当に怖かったし、粕谷栄市なる詩人の名前を知れたのも良かった。中国の古典から都市伝説まで、古今東西怪談の種は尽きまじ。事程左様にホラーと散文詩は相性が良い。怪談は理屈を必要としない。むしろ訳が判らない方が怖い。著名な小説家の多くが薄気味悪い掌編を描いているのが非常に興味深い。残念なのは「抄」という謂わば抜粋も多く、そんなことされたら結局元本を読みたくなってしまうではないか。
2020/02/14
踊る猫
東雅夫のDJとしての豪腕が冴え渡る一冊。八百字という成約に合わせるべくカットされた抄録が多いのはまあご愛嬌だが、ド定番の古典文学から現代の怪談まで収録されているジャンルは幅広い。この一冊を知らなければ石上玄一郎のような著者は手に取らなかったはずなので、改めて読書の幅を広げてもらえる一冊となった。テーマが緩やかに繋がっていく構成の見事さに舌を巻く。一体どれだけの本を読めばこんなアンソロジーを編めるのか。穂村弘が秀逸なショートショートを書いていることを知ったのもまた収穫だった。この編者、懐の深さは只者ではない
2019/08/10
那由多
短い物は1行、長い物でも3ページ、100名から成る怪談集。小松左京の意外な幽霊/入澤康夫の幻想とも狂気とも取れる詩。朗読する人のリズムの付け方による変化で、いろいろ愉しめそう/西條八十の詩に惹きつけられたが、後から反戦詩と聞いてから読み返してみると、全く違う印象の生々しさが出てきた/水野葉舟、これは怖い。友人はどうなったのでしょうか/芥川龍之介が見た足が幻覚なら精神が病んでることが怖いが、本物なら恥ずかしがって誤魔化した異常さが怖い。
2020/02/10
SIGERU
錬達の編纂家、東雅夫による、800字以内の掌編怪談アンソロジー。中国六朝時代の志怪小説『捜神記』から、平成日本の最新作まで、本書の守備範囲は茫々一千八百年を閲する。京極夏彦に始まり、浅井了意の百物語で締めくくる構成も洒脱。本書の白眉は幾つかあるが、やはり川端康成『心中』に指を屈する。まさに奇跡の一篇。入澤康夫や折口信夫の咒術的な詩篇も、鬼気せまるものがある。車屋長吉に至っては、おどろしい書き文字含めて、もはや怪異そのもの。お気に入りの作家を見つけて、原典に当たってみるのも、読み手のひそかな愉しみだ。
2021/07/21
まみ
古今100人の文豪が集まって百物語を語るのを聞くかのような贅沢。前後の作品が少しずつリンクする絶妙な配置により、あたかも前の語りからの連想で次の語り手が話を紡ぎ出しているかのような錯覚に陥る。好きだったのは粕谷栄市「箒川」、小川未明「樫の木」。入澤康夫の詩もぞくりとして良かった。ラルラルラルラ。何度も読みたい。購入候補。
2009/11/22
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