(P[あ]2-1)光車よ、まわれ! (ポプラ文庫ピュアフル あ 2-1)
(P[あ]2-1)光車よ、まわれ! (ポプラ文庫ピュアフル あ 2-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
私は、通常は読んだ本に対して、人それぞれの受け止め方もあるのだからと思い、部分的にはともかく全的な否定はしないことにしてきた。しかし、この本に関してはどうしても受け入れがたいものがある。それは、この物語が子どもの命をあまりにもないがしろにすることだ。弘子と弓子の双子の姉妹(共に主人公たちと同じ小学6年生)の2人ともが、いともあっけなく殺され、しかも、そのことを物語の主人公が、自分たちに対する「脅し」としか認識していないのだ。筆者は、詩人として、また宮沢賢治の研究者としては、大きな業績を残しているのだが。
2013/06/10
ワッピー
34年ぶりの再読。奇妙な水が街にあふれ、同級生が黒い大男の姿に・・・そして学級委員からも目をつけられた一郎は、何かを知っているらしい龍子の一党に加わり、謎の「光車」を探すことに。敵は次第に迫ってきて、謎の制服組も現われて日常生活も監視を受け、街に不穏な空気がじわじわと満ちてくる。敵に相当ハードなトラップを仕掛けたり、同級生が見せしめに殺されてしまうなど、小学生を主人公にするには相当ダークな世界観。国立図書館の夜間閲覧室の描写や水面を抜けて裏側の世界へ落ちてしまう感覚、地霊文字という言葉にゾクゾクしました。
2021/10/05
おおた
再読でも忘却の彼方にある記憶が突然蘇る。図書館の夜間閲覧室、サイケデリックな電話機、這い回る混沌のような水。確かに怖さはあるかもしれないが、世界の煌めきがとてもきれいで、視点を受け持つ一郎とともに不思議な空間を冒険する楽しさは類を見ないおもしろさ。
2019/03/09
ハチアカデミー
宮澤賢治の文庫解説でお馴染みの天沢退二郎のジュブナイル小説。土地に残された文字「地霊文字」と、目に見える世界と裏側の世界を動かす「光車」という設定が既に面白い。場所をひとつの生命体と見なし、その中で少年・少女が躍動する物語。悪魔が躍動する水の世界表象はラブクラフトを、安部公房を想起させるし、物語の背後にある大きな世界観は賢治を思わせる。「光車」のフィルムを目に焼き付けることで、異なる世界が見えるようになるという設定は電脳コイルだ。本書は、漫画やアニメを含む日本文芸のミッシングリンクなのかも知れない。
2014/09/01
カープ青森
小学生の頃、学校の図書室から借りて読み、物凄く衝撃を受けてずっと心に残っていました。大学生になり上京してピクニックアットハンギンングロックというやや難解なオーストラリア映画を観たとき、解説が欲しくて買ったパンフレットの中にこの作家さんの文章を見つけて東大の人だと知ると共に本作を思い出した記憶があります。40年以上前に読んだときは挿し絵がもっと多くオドロオドロしい感じで怖かった。一郎、龍子、ルミらの冒険譚。初めて読んだ小学生のときを五感で思い出しました。本はタイムマシンです。
2019/10/25
感想・レビューをもっと見る