わたしが死について語るなら
わたしが死について語るなら / 感想・レビュー
モリー
誰もが「ひとり」で死ぬということは、取りも直さず誰もが「ひとり」で生きているということです。では「ひとり」で生きるとはどういうことか。途中、本を閉じてその事を考えながら森の中を「ひとり」で歩き回りました。木を見上げると同じ樹種であっても、生える場所によって樹形が大きく異なる事に気付きました。崖っぷちの岩を根で包むようして伸びる木もあれば、一方向からの強風を受け続けて背が曲がったように見える木もありました。運良く日当たりの良い場所に生える木も。私も所与の条件を受け入れ「ひとり」で精一杯生きるしかないのです。
2021/02/06
アルピニア
児童向けに刊行されたものを年長者向けに編集し直した作品とのこと。語りかけるような平易な文で書かれている。山折氏は、戦後民主主義、特に「横並び」の平等主義と個性の尊重に苦言を呈している。個性を大切にと叫ぶ前に、「ひとり」で立つことをめざそうと言う。そして、死について学び深く考える鍵は文学(作中、宮沢賢治、金子みすゞを紹介)で、特に日本人の情感や倫理観をみがき育てるには、古典(万葉集、源氏物語、平家物語、謡曲、浄瑠璃)を学ぶことを勧めている。山折氏の「ひとり」についての考え方をもっと深く読んでみたいと思った。
2021/04/10
小豆姫
これまでに何度も味わってきた宮澤賢治の『雨ニモマケズ』の言葉一つ一つが、切実なる祈りとなってダイレクトに胸に響いてきた。初めて知った北原白秋の『金魚』はショッキング。でも、リアルな死を知ることでより今を生きることが強く実感できるのかもしれない。日本人の魂に脈々と流れている『平家物語』の無常感など、日本の古典をきちんと学び直したくなった。もともと児童向けに書かれたものなので、文章が平易で読みやすい。良書。
2021/06/02
犬養三千代
大河内清輝くんの遺書。心に沁みる。ふと円谷幸吉さんの遺書を思い出す。金子みすゞ、白秋。平等は幻想だ。「ひとり」を生きる。姿勢を正し、呼吸を整え、そして黙想する。個が自立する。静かに呼吸してみようと思う。深く息を吸いゆっくり吐くそして息を止める。なかなか難しそうだ。
2019/10/28
La Principita
宗教学者である著者の、もう少し直接的な「死」についての考えが述べられていることを期待したので、少し予想とは違った。が、日本人は幼い頃から、祭事、行事や文学などを通じて「死」に触れるべきと説く中で、宮沢賢治や金子みすずから平家物語や今話題の万葉集のなどについて「死」に関する読みどころが説明されていたのが勉強になった。古典もきちんと読まなくては、と思わされた。
2019/04/14
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