(002)絆 (百年文庫)
(002)絆 (百年文庫) / 感想・レビュー
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
どうしても損得勘定をしてしまう。この人といると自分にはどんないいことがあるだろう、この人に手を貸しておそろしいことをされたりしないかな?きっと無意識で計算している心の奥底を、いちど洗ってまっさらに、白紙にしてしまいたい。「信じただけだよ。信じられるくらい人間を力づけるものはないからね」裏切られることなど想像もせずに、ひたすら信じることはもう難しい。でも信じたい。夏の暑さに雪原をおもうような。
2020/06/24
やすらぎ
百年文庫。三作品収録。…①なぜ意地を通すのか。それよりも大切なものがあるだろう。心が離れ心を解す。愛のある厳しさに嬉し涙が溢れてくる。申し訳なかった。良いも悪いもない、同士であると。…②過ぎ去りし五十年の歳月。運命の犠牲を負った互いが、涙をとけ合わすことさえできればそれでいい。失望と狂乱は蘇り、忍耐と信頼は叶い、清らかに旅立った。…③凍ての宵。微笑、当惑げな寂しい眼、空を眺める。遠雷が鳴り響く。火鉢の灰が低く呻いている。人徳に桔梗が咲く。…世は連綿とつながっている。我一人で生きてはいけない。「絆」である。
2022/01/08
新地学@児童書病発動中
絆をテーマにした3つの短編。海音寺潮五郎の「善助と万助」は男同士の武骨な友情に泣ける。山本周五郎の「山椿」は、この作者らしい隙のない名品。人を信じることの素晴らしさを教えてくれる。ドイルの「五十年後」はドラマチックで感動的な作品。物語の終盤で女性の一途な想いが実を結ぶところに救われた気持ちになった。シャーロックホームズの作者が、このようなロマンティックな物語を描いていたことが意外だった。
2015/12/28
アン
人と人が触れ合い、信頼し思い遣ることで結ばれる心の絆は一粒の真珠のように美しい。少年の頃、主人が兄弟の誓約をさせた家老2人。老年を迎え剛情者の心を溶かした誠実な熱い想いと深い友情に涙こぼれる『善助と万助』海音寺潮五郎。デヴォンシャーの町に住む、結婚間近な恋人達を襲う悲劇。カナダへ渡った男の運命の行方とひたむきな愛の尊さ『五〇年後』コナン・ドイル。優れた才能を持つ男の堕落と再起、夫を拒み続ける新妻の思わぬ告白が切ない。人を支える力『山椿』山本周五郎。心なごむラストでしみじみとした味わいがある忘れ難い名篇。
2023/09/07
藤月はな(灯れ松明の火)
どれもこれも読んだ後は晴れやかな気持ちになります。「善助と万助」は良い歳をした男が頑なに口を訊かなかったのは、そういう理由!?言葉よりも行動で示した方が強烈なのは何時の世も同じか。「五十年後」はコナン・ドイルが執筆。悪辣な宿屋一家によって運命を狂わされた二人。それでも巡り会えた奇跡と短くも限りなく、幸福なその後を思うと胸が暖かくなる。「山椿」の操を頑なに守り、自害すらも辞そうとしないきぬに対しての主馬の粋さが鮮烈だ。そして彼にはあの子の方がいいのはもう、分かりきった事だったんだね。
2018/08/02
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