(017)異 (百年文庫)
(017)異 (百年文庫) / 感想・レビュー
かりさ
百年文庫『異』読了。シンプルな装丁と、短篇選書の品の良さ、フォント、行間、紙質…全てが心地よくて好きで心をくすぐってくれる。江戸川乱歩『人でなしの恋』、ビアス『人間と蛇』、ポー『ウィリアム・ウィルスン』。乱歩先生の仄暗く耽美で美しい物語に漂う贅沢。ビアス、ポーも怪奇的で良い。ポーの翻訳は乱歩先生。
2018/08/19
えみ
意味が分かった瞬間に凍りつく。そういうことだったのかと全ての疑いが解かれるとき、同時に解け切れない疑問が残っていることに気づいてしまう。その出来事は“異様”、決して直視してはいけない3篇の短編を収録した『異』。百年文庫シリーズ第17弾。夫の最も愛したモノは私ではなかった。新妻を苦しめる夫の不貞が怖い、江戸川乱歩の『人でなしの恋』。学者を襲った神経を破壊するベッドの下の目の正体が意外過ぎる、ビアスの『人間と蛇』。同姓同名の罠に嵌って地獄を見た、ポーの『ウィリアム・ウィルソン』。奇妙な異にゾワリとする一冊。
2022/12/25
モモ
江戸川乱歩『人でなしの恋』愛しい夫が夜な夜な土蔵へ行き、誰かと密会している。その状況であれば、どんな暗闇も怖くはなく、事実の方が怖いのだろう。ただ、もっと恐ろしいことが口を開けて待っていた。ビアス『人間と蛇』思い込みによる恐怖もあるだろうが、蛇はやっぱり怖い。ポー『ウィリアム・ウィルソン』同姓同名の自分に似た人が現れて、長きにわたり駄目だしばかりされる。彼が向き合ってきた相手は何だったのか。破滅に向かう様子が、ポーと重なるようで少し切ない。江戸川乱歩の作品をもう少し読んでみたい。
2020/08/12
藤月はな(灯れ松明の火)
江戸川乱歩の「人でなしの恋」は人並みになろうとしても偽れなかった脇田氏の末路がやっぱり、哀しい。本当の人並みというのは曖昧にも関わらず、個人の幸せとすり合わない生きていると感じる悲哀を描いていると思います。ビアスの「人と蛇」は不気味な描写と真相のあっけなさの落差が逆に「落とし穴に嵌るぞ」と囁かれているような物語で冷や汗を掻きました。ポーの「ウィリアム・ウィルソン」の良心と放蕩の対決は「ジキルとハイド氏」でも感じた性悪説を思い出します。
2012/08/01
ヒロ@いつも心に太陽を!
今回は《異》。それは怪異の異であり、異界の異である。まずは江戸川乱歩の『人でなしの恋』。美男子で変わり者の夫が恋をしたのは、この世のものではなかった。その相手にはすぐに見当がつくが、そこで「実は女の霊が取り憑いていた」なんて話に持っていかないところがさすが。これは、ぞっとする。ビアスの『人間と蛇』。ベッドの下で光る二つの目。自信家の学者である彼は、その目から逃れることが出来ず、一人挑んだ結果、精神的に壊れていく。ラストは結構あっけなかった。続く
2013/02/26
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