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(026)窓 (百年文庫)

(026)窓 (百年文庫)

(026)窓 (百年文庫)

作家
遠藤周作
ピランデルロ
神西清
出版社
ポプラ社
発売日
2010-10-12
ISBN
9784591119082
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(026)窓 (百年文庫) / 感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

百年文庫収録の短編はどれも面白いが、この巻の3篇は特に際立っている。遠藤周作の『シラノ・ド・ベルジュラック』は老いて厳格な学者が見せる哀しみが心に残る。結末で彼が流す涙は遠藤文学の精髄と言えるもの。誰も持っている弱さに対する作者の共感の象徴だと思う。ピランデルロの2編は短い話しながら、作者のストーリーテーリングの冴えを味わえる。神西清の『恢復期』は、少女を語り手にした繊細な文章が素晴らしい。名訳者でもあった作者の隅々まで気配りの行き届いた文章を堪能した。

2015/04/19

アン

リヨンに留学した「私」に仏蘭西語を教える老学者、書棚にはシラノの血の通った手記の写本が…。舞い散る粉雪によって孤独な男の哀しい運命が浮かび上がる『シラノ・ド・ベルジュラック』遠藤周作。幼少期より過酷な境遇にあった男が魂の慰めを見出す隣家の和やかな灯り。男は人妻に恋心を。『よその家のあかり』。園遊会で会った美しい婦人との意志の疎通、亡くなったはずが…『訪問』ピランデルロ。熱病で療養する少女の生命の煌めき『恢復期』神西清。窓を境に外界と内面世界を対比、窓という枠が切り取る予期せぬ光景と心の綾を映し出す4篇。

2024/02/22

えみ

内と外を繋ぐ。色彩豊かな光を取り込み、息詰まることの無いように新鮮な空気を通す内側の役割。一方で外側からはどうか。遮断されたプライベート空間で秘めたる本当の姿を覗き見るための役割として存在するのだろうか…。誰かが誰かの思いがけない一面を見る物語。3篇の短編を収録した『窓』。百年文庫シリーズ第26弾。老学者の哀しい叫びを見た、遠藤周作の『シラノ・ド・ベルジュラック』。人生や生活に孤独を温めた、ピランデルロの『よその家のあかり』。療養少女が新鮮な感性で目撃する、神西清の『恢復期』。覗く行為の背徳感が堪らない!

2023/03/05

モモ

遠藤周作『シラノ・ド・ベルジュラック』留学先のリヨンの食堂で「妻を寝取られた」ウイ先生に出会う。淡々と規則正しい生活をする先生が、ある出来事で憔悴する。ピランデルロ『よその家のあかり』薄幸な青年が、隣家の家の窓から見える温かい夕食のひとときに心を奪われる。そして、まさかの結末が。女性が窓越しに目にする、不幸になった家族の姿が切なすぎる。『訪問』緑色、水色、空気、光の満ちた部屋で見る幻。神西清『恢復期』体調をくずし、熱海や軽井沢で療養生活を送る卵女子。ピランデルロの作品が心に残った。他の作品も読んでみたい。

2021/01/21

アルピニア

「シラノ・ド・ベルジュラック/遠藤周作 」小説家を目指している留学生の私は「妻を寝取られた」学者に興味を持ち、フランス語の生徒として家に通う。師の秘密を暴こうと部屋を探っていてシラノの手記の写しを見つけ・・。「よその家のあかり、訪問/ピランデルロ 内山寛 訳」ほろ苦さを残す二編。特に「よその家のあかり」は、大切に、憧れていたものを自ら壊したやりきれなさを感じた。百年文庫の中で特に私の心に残る一篇。「恢復期/神西清」熱病から生還した少女の日記。次第に病室から窓の外へと感性が広がっていく様子が清々しい。

2023/11/30

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