(042)夢 (百年文庫)
(042)夢 (百年文庫) / 感想・レビュー
アルピニア
「すみれの君/ポルガー(池内 紀 訳)」落ちぶれた伯爵が結婚式に指輪を用意するためにとった行動は・・。信条は倫理に勝る?どこか憎めない。「雨の中の噴水/三島 由紀夫」人生で最初の別れ話をきりだす青年。雨の中の風景が美しい。「フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯/ヘミングウェイ(高見 浩 訳)」ライオン狩りで臆病さをさらけ出してしまった男は妻との関係も危機に陥り・・。妻の行動は意図的だったのだろうか。どの話もほろ苦い男女の関わりを描いている。「夢」というテーマでこの3篇を選択した旨意にも思いを馳せた。
2022/06/28
モモ
ポルガー『すみれの君』オーストリア貴族で淡青色眼のすみれの君。モテる彼は借金を重ね人前から遠ざかる。晩年の彼に思いもかけない願いが伝えられる。三島由紀夫『雨の中の噴水』自分に「捨てられた女」をつくるため、女性と付きあった明男。思惑通りにいきそうだったが、女性の方が一枚上手だった。身勝手な明男に腹が立つ。ヘミングウェイ『フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯』アフリカで狩りを楽しむ夫婦だったが、夫の失態で夫婦に危機が訪れる。夫は自信を取り戻すも…まさかの結末。幸せな夢、阿呆な夢、何とも言えない夢の話でした。
2022/10/07
雪月花
ポルガーの『すみれの君』、三島由紀夫の『雨のなかの噴水』、ヘミングウェイの『フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯』の三篇は、少し並外れた男女の関係を描いているが、どれも最後に意外な展開となり驚かされた。ヘミングウェイのこの短編では、アフリカでの狩猟の獲物との命がけの闘いで『老人と海』に通じるものがあったが、ヘミングウェイが実際に夫人とアフリカで体験したサファリをもとにした作品らしい。この百年文庫のタイトルは『夢』より『驚』の方が合っているような気がした。
2023/08/11
神太郎
「すみれの君」。男子かくありなんということか。見栄っ張りと言えばそれまで。だが、なぜかカッコよく見えてしまうのが不思議だよな。「雨の中の噴水」。まぁ主人公が屈折しているが、これが三島の味なんだ。今回も「女を振ってみたい」という動機で付き合うとか…。でも物語はそう簡単にはいかない。これが面白い。ヘミングウェイの作品は自然の中で覚醒する「男」の物語。しかし、奥さんはどうもそれが面白くない。弱々しい時も不平を言い、覚醒するとそれも嫌という。難しい。最後に訪れる悲劇に関しては色々と考察できそう。今作は全て当たり!
2017/09/30
鯖
ポルガー「すみれの君」三島由紀夫「雨の中の噴水」ヘミングウェイ「フランシス・マカンバーの短い幸福な生涯」の3編。落ちぶれた貴族が恋人に先立たれて身ごもったうら若き女性の偽装結婚の相手を務めることになる「すみれの君」がよかった。結婚指輪にも事欠くありさまなのに矜持を守り、彼なりの美学を貫いて婚姻しその場で離婚する。養老院でおばあちゃんたちにもてまくりな彼の晩年が救いでした。
2021/01/31
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