(048)波 (百年文庫)
(048)波 (百年文庫) / 感想・レビュー
kaizen@名古屋de朝活読書会
芥川賞】八木義徳「劉廣福」。主人公は工場の採用も担当していた日本人。劉廣福を工員として採用し、働きぶりの観察記録。劉廣福は働きながら、次々と功績を挙げていく。劉廣福に許嫁がいて、力の根源が分かる。当時の工場の有り様をよく描写している。物品の盗難など、対処の仕方を間違えると作業効率の低下を招き悪循環から抜けられなくなることが想定できる。時代の記録。
2014/11/08
新地学@児童書病発動中
人生の荒波に立ち向かう男たちを主人公に据えた3つの短編。菊池寛の『俊寛』は雅な優男だった俊寛が島流しという逆境に鍛えられて、腹のすわった男に変貌していく過程が爽やかだった。八木義徳の『劉廣福』は、気の優しい力持ちの男の描写が素晴らしい。劉廣福が冤罪という逆境に耐え抜く姿に励まされた。一番の好みはポーランドのノーベル文学賞作家シェンキェヴィチの『燈台守』。あらゆる困難をくぐり抜けてきた強靱な男の失敗が切ない。望郷の念を持たない人間はいないのに、と思う。
2015/07/12
アン
謀反を起こし流罪、赦免されず孤島に残された男の新たな道、絶望の中、俗世の価値観を断ち切り自由を掴み、自らを眼前の環境に適応させ復活する逞しさが胸に迫る『俊寛』菊池寛。満州の工場に雇われた巨大な体躯、童顔、強烈な吃音で孤立する男が襲いかかる苦難に耐え、誠実に仕事を成し遂げ信頼を得る様に心洗われる『劉廣福』八木義徳。世界を放浪続けたポーランドの老人が求めた安寧、孤独な仕事に励み自然と融合するも…。愛する祖国、望郷の念は切なくも美しく儚い『灯台守』シェンキェヴィチ。寄せては返す波に導かれるような運命に光を。
2024/01/15
アルピニア
「俊寛/菊池 寛」陰謀が露見して鬼界ヶ島に流され、恩赦もかなわず一人残された俊寛のその後に関する異聞。何もかも失った時に見えたものは・・。「劉廣福/八木 義徳」読み書きができず、吃音で話すこともままならない劉廣福が人生を切り開いていく物語。芥川賞受賞作。「燈台守/シェンキェヴィチ(吉上 昭三 訳)」運命に翻弄され放浪の人生を過ごしてきた男がやっと手に入れた平安の日々。そこに届いた母国語の本。時を忘れてしまうほどに溢れる望郷の思いに胸打たれる。作者はポーランドの作家。ポーランドという国の過酷な歴史を思う。
2022/07/26
モモ
菊池寛『俊寛』島に一人残された俊寛。悲劇の結末かと思いきや、他の二人がいなくなり、かえって冷静に考えられるようになった俊寛の第二の人生が素晴らしい。八木義徳『劉廣福』満州の日本工場で働く巨大体躯で童顔の劉廣福。日本人労務係に気に入られたが吃音で話せない彼は閑職になる。だが誠実な働きぶりで、なくてはならない人になる。彼の誠実さが読んでいて清々しい。シェンキェヴィチ『燈台守』世界を渡り歩き、疲れ果てた男が燈台守になる。祖国ポーランドへの思いで職を失うも、ついに幸せをつかんだように見える。確かに波を感じる一冊。
2022/09/19
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