(051)星 (百年文庫 51)
(051)星 (百年文庫 51) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
北欧の作家による3つの物語。暗闇の中で明るく光る星を見つけたような気持になる物語ばかりだった。アンデルセンの話は苦労人のアントンさんの幼い頃の思い出が心に沁みる。物語ることによって一人の男の人生に詩的な輝きをもたらすところが、いかにもアンデルセンという気がした。ビョルンソンの「父親」はシンプルな物語ながら、子を想う父の愛情が痛切に伝わってくる。一番長いラーゲルレーブの「ともしび」は知恵と奇跡にあふれた物語。乱暴な主人公の男がエルサレムから自分の故郷へ聖火を持ち帰ることで、人間らしさを取り戻していくお話。
2015/04/06
モモ
アンデルセン『ひとり者のナイトキャップ』コペンハーゲンに、なぜか結婚しない約束でドイツから派遣された「こしょう番頭」のアントン。孤独な彼が過ぎ去った日々の美しい光景を夢にみながら星になる…。ビョルソン『父親』短い文章だが、父の息子への愛情、喪失からくる悲しみと再生がつまっている。短いが良い。ラーゲルレーヴ『ともしび』屈強な荒くれ者だったラニエロ。妻が去り、十字軍で誉れ高き勇士となるも、聖火をフィレンツェまで運ぶことになり人間性が変わっていく。どんな人も良い方向に変わっていく星のようなきらめきに満ちた一冊。
2022/10/01
臨床心理士 いるかくん
北欧の3人の作家の短編3篇から成るアンソロジー。どの作品も味わいがあるが、スウェーデンの作家ラーゲルレーヴの「ともしび」が圧巻の素晴らしさ。
2014/01/25
神太郎
ひとり者のナイトキャップ、父親は悲しさの方が勝る話だった。特に父親は息子を愛していたのに先立たれてしまうという話で、父親の愛情の強さを感じつつも悲しい結末には心打たれる。最後のともしびは、長い道程のなかで荒くれものだった男が改心していく物語で、こっちの展開の方がテーマにもあってて好きかな。最初は「星なのか?涙ってテーマの方があってないか?」とか考えていたのだが、風景だけでなく人や場所などを星に例え手の届かない所へいってしまったもの達を思う作品群だったのかと思えば納得。概ね満足のいく内容でした。
2019/09/30
鯖
ラーゲルレーブ「ともしび」アンデルセン「ひとり者のナイトキャップ」ビョルンソン「父親」の星になった命を描いた三篇。父親が山室静さんの訳で懐かしくなった。洗礼、堅信礼、婚約のおひろめと教会にそのたび寄付をしてきた父が愛息を亡くし、恵まれない人たちのために基金をとまた多額の金を寄付する話。「お前の息子はとうとうお前の祝福になったのだな」との牧師さんの言葉が哀しい。
2021/06/27
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