(062)嘘 (百年文庫 62)
(062)嘘 (百年文庫 62) / 感想・レビュー
アルピニア
「革トランク、ガドルフの百合/宮沢 賢治」革のトランクは嘘の象徴。「嘘、狐の子供/与謝野 晶子」嘘をついているうちに自分自身がその世界に浸ってしまう。「ある孤独な魂、せまい檻、沼のほとり、魚の悲しみ/エロシェンコ 高杉一郎 訳」衝撃を受けた。澄んだ視点から描かれる淡々とした文章が心を抉る。どの物語にも深い哀しみがにじみ出ている。エロシェンコさんは、人類の平等にとどまらず、全生物の平等に思いを馳せていたのではないか。エロシェンコ作品をもう少し追いかけてみようと思う。
2022/12/26
モモ
宮沢賢治『革トランク』はヘンテコな設計をする平太の嘘の出世話。それを一目で見破る父が可笑しい。与謝野晶子『狐の子供』は昔も今も変わらぬ意地悪な女の子。最後の返しが良かった。4歳で失明したエロシェンコ。盲学校の生徒が質問する内容に先生たちは答えられず、逆に怒り出す。彼らは目が見えないぶん、自らが実際に感じたことを信じる。そして、それはきっと正しい。日本を追放される前日に「芸術家の悲しみとして」書いた『魚の悲しみ』はエロシェンコの不当に支配する者への怒りに満ちている。エロシェンコの作品をもう少し読んでみたい。
2020/08/09
あじ
8つの『嘘』を収録した短編集。エロシェンコの4篇に脳天が痺れました。鋭利な闇の目(エロシェンコは盲人)で、胸裏をまさぐられる羞恥と歓喜を交互にかき抱いたのでした。◆2019年7月 追記メモ 百年文庫「花」に収録されている城夏子『つらつら椿』にエロシェンコが登場。城さんのお父様(緑内障で失明)とエロシェンコが 対面する場面が描かれている。
2018/04/23
神太郎
今回は短編が一人一作品ではなく、複数作だったので大変満足だ。宮沢賢治『革トランク』はなんと言うか、見栄ばかりが見えて、そりゃ親父さんも苦笑いになるよね。与謝野晶子『嘘』はいきなり継子だのを九つの子がある程度意味わかって話してて驚く。今以上にませてたのか?でも、ここでそんな嘘をついてどうするのかなと思ったり。エロシェンコ『ある孤独な魂』は盲人だからこその視点が新鮮であり、痛快で何回か笑ってしまだた。と同時に盲人の方への当時のロシア内での理解がかなり低かったのが伺えて興味深かった。
2020/01/22
マッキー
ふつうは3人の作者の短編がそれぞれ一つずつ収められているけどこの本は合わせて計八編が収録されていた。盛りだくさん。エロシェンコ「ある孤独な魂」は盲目の作者が独特の感性を活かして人間の本質に迫る作品。目が見えない主人公たちは話し声や相手の手の感触、気配で物事のすべてを感じ取っていく。差別的な先生に言い返すそのセリフにはっとさせられる場面も多かった。
2017/03/16
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