(075)鏡 (百年文庫 75)
(075)鏡 (百年文庫 75) / 感想・レビュー
アルピニア
「見知らぬ人/マンスフィールド 浅尾 敦則 訳」旅から戻った妻を「見知らぬ人」と表現しているが、この場合は考え方の違う人というより、自分の意のままにならない人を指しているように思えた。「ヌマ叔母さん/野溝 七生子」悲しいことに京子さんのような人が世の中にはいる。そしてヌマ叔母さんがくれた贈り物に気づく人もきっといる。「アヤメ/ヘッセ 高橋 健二 訳」イリスが出した課題を解くために彷徨した末にたどり着いたのは・・。「鏡」は、自分の心の淵を表しているのだろうか。
2023/03/20
臨床心理士 いるかくん
3人の作家の3つの作品から成るアンソロジー。「鏡」がテーマの作品集だが、3篇とも物理的ないわゆる「鏡」は全く出て来ない。にもかかわらず、なぜ「鏡」がテーマで集められた3篇なのか。読んだ後、ちょっと考察を余儀なくされる、百年文庫にしてはやや異色の短編集。
2014/12/09
モモ
マンスフィールド『見知らぬ人』愛する妻が長い船旅を終えて帰ってくる。今か今かと待つ夫にそっけない妻。そして明らかになる事実。夫の妻に対する思いが殺されてしまったように感じた。妻よ。反対の立場だったら怒るだろう。野溝七生子『ヌマ叔母さん』底意地の悪い兄嫁に悪い子の烙印を押され、一家の伝説の怖い人扱いされたヌマ。でもヌマの気高さ・優しさは輝きを増す。最後まで兄嫁が憎たらしい。野溝七生子作品をもっと読んでみたい。ヘッセ『アヤメ』難しい。幼い頃の美しい思い出「イリス」に帰っていったのか。アヤメの中に広がる小宇宙。
2022/10/30
あじ
■海を隔てた十ヶ月に、夫の発狂的煩悩が作動する。強く揺さぶってでも聞き出したい“愛してる”─マンスフィールド「見知らぬ人」。旅に出ることをどう納得させたのか、自由奔放で自立した女性を想像させる妻。一方で妻の不在を、四六時中やきもきばかりして過ごしただろう夫。糊付けされた二人の背景の、きれいに剥がれないところを枚数以上に書き込んだ名品なり。■時が抗弁してくれるまで悪者でいい─野溝七生子「ヌマ叔母さん」に残響。◆【百年文庫】50冊目の読了で折り返し。
2019/07/14
神太郎
今作もテーマに対してこじつけたんじゃないかと思うくらいに作品とテーマがかけ離れてる気がする。百年文庫では良くあることだが、三作ともってのはなかなかではないか。虚像を写すのが鏡ということなのだろうか。個人的にはマンスフィールドの『見知らぬ人 』が印象的。妻がどこかおかしいという緊張感と中盤から終盤にかけての短い妻の告白から色々なことが想起される。愛するがゆえにその告白が効いてくるんです。ガツンと。少しサスペンス調な雰囲気がある。緊張感と悲哀を存分に味わえた。
2021/02/13
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