惚 (百年文庫 82)
惚 (百年文庫 82) / 感想・レビュー
モモ
斎藤緑雨『油地獄』柳橋芸者に惚れた貞之進。第三者から見ると脈ナシなのだが、自分のことを好いているはずとのめりこむ貞之進。その姿は惚れるというより、恐ろしさを感じるほど。最後はなんとも。火事にならなくて良かった。田村俊子『春の晩』文章の紡ぎ方が美しい。巻末の作者紹介を読むと、恋多き女性だったよう。作中のエピソードも、なんとなく作者を感じさせる。尾崎紅葉『恋山賊』読みにくい。山で倒れた美しい娘を助ける男。あまりの美しさに惚れたようだが、その場面を想像すると少し気持ち悪い。惚れるって一方通行な恋だと感じた一冊。
2022/10/23
臨床心理士 いるかくん
3人の作家の3篇から成るアンソロジー。芸奴に入れ込み、狂ったように嫉妬する主人公を描く、斎藤緑雨の「油地獄が」が好み。「縁が不思議なものなら、ほれるは一層不思議だ」、という一節が切ない。
2014/12/18
マッキー
斎藤緑雨の「油地獄」、惚れた女のことで頭がいっぱいになり女について四六時中考え、まるで幻覚でも見るような気持になってくる男。私もこういう経験はこの男ほどではないが何度かあるので同情してしまった。一人合点なところと妄想癖のあるところが自分とよく似ている。
2017/10/22
TSUBASA
口下手の貞之進が同郷人の集まりで出会った芸者に入れ込んで破滅の道を辿る、斎藤緑雨『油地獄』。他、田村俊子『春の晩』、尾崎紅葉『恋山賤』収録。雨の日の物憂い風情と百合百合しさ漂う田村俊子も良かったけど、言葉は難しいけど口語体で読みやすい斎藤緑雨が面白かった。芸者にハンカチを差し出されてどぎまぎして受け取れないでいたら「あら儂のではお厭なの」と言われ、その言葉を悶々と何度も思い返したり、色男の秘訣という本を買おうとして店主になじられて取り替えた本が三世相解万宝大雑書だったとか大笑いした。結末は惨かったけど。
2016/01/09
Baro
百年文庫7冊目。斎藤緑雨「油地獄」:油地獄って、どんなどろどろな結末になるのかと思ったが・・・/田村俊子「春の晩」:飽き始めても、キープはしておきたいよね。でもそれだけじゃ物足りないんだね。/尾崎紅葉「恋山賤」:ちょっぴりファンタジー風味を感じた次の瞬間、現実に引き戻された感。でもほっとした。ところで、最近web小説ばっかり読んでる頭に、明治の文体はこたえた。。。けど、読んでるうちにだんだん慣れました。スピンはバーミリオン。
2018/08/08
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