泪 (百年文庫 92)
泪 (百年文庫 92) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
思わずほろりとする三つの短編。別々に読んでも心を打たれたと思うが、三つ続けて読んだので各々作品が持つ余韻が深まった。深沢七郎の「おくま嘘歌」は無名のままに地を這うように生きた母の肖像を、印象深く描く短編。島尾ミホの「洗骨」は奄美地方に伝わるめずらしい習慣が書かれている。改葬を行い、その時に埋葬をされていた遺骨を水で洗うのだ。詩的で硬質の文体が心に残った。人の生のはかなさが身に沁みる。色川武大の「連笑」は作者と弟の絆を描く作品。無頼派の兄と生真面目な弟の対照が面白い。対照的な二人だが、深い絆で結ばれている。
2018/03/05
kinkin
1.深沢七郎「おくま嘘歌」2.島尾ミホ「洗骨」3.色川武「連笑」「おくま嘘歌」はおくまさんの質素で穏やかな暮らしぶり、そして死が穏やかに書かれていて読後感か心地よかった。「洗骨」という風趣があることは知っていたが具体的に書かれていたものは始めてだった。地方にはまだまだ土地独特の風習が残っっているのだろうな「連笑」兄と弟の絆がテーマなのだろうか。映画「麻雀放浪記」の主人公が重なってしまった。このシリーズ百年文庫には読んでみたい作家が多く納められているのでもっと読んでみたい。この本のベストは「おくま嘘歌」
2022/11/21
モモ
深沢七郎『おくま嘘歌』控えめなおくま。息子夫婦と孫たちと暮らし、たまに娘と孫に会いに行く日々。幸せなのだろう。島尾ミホ『洗骨』奄美黄島生まれの島尾ミホ。そこの伝統行事なのだろうか。子孫が先祖の骨をきれいな川で洗う儀式。夫・敏夫の不倫が発覚。精神のバランスを崩して入院。その後、病気療養のため奄美黄島へ移住する実話が『死の棘』になったとは。色川武大『連笑』幼い頃から浅草に連れまわしていた6歳下の弟。同じ両親をもち、家庭の匂いの記憶を持つ者同士の不思議な絆。身内の者同士の争いのない、穏やかな話の一冊でした。
2022/10/22
臨床心理士 いるかくん
3人の作家の3篇の作品から成るアンソロジー。途切れない絆。
2015/02/08
tomi
深沢七郎の連作「庶民列伝」より「おくま嘘歌」、島尾ミホ「洗骨」、色川武大の私小説「連笑」と家族の繋がりを描いた3篇を収録。「連笑」は新潮文庫の「百」にも収録されている作品。世間に馴染めずにアウトローに生きる「私」と勤め人として堅実に生きながらもそんな兄に憧れの気持ちを抱く弟。違う人生を歩む二人の情愛がしみじみと描かれる。色川作品から久しく遠ざかっていたが、やはり良い。
2015/09/18
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