妹背山婦女庭訓 (橋本治・岡田嘉夫の歌舞伎絵巻 5)
妹背山婦女庭訓 (橋本治・岡田嘉夫の歌舞伎絵巻 5) / 感想・レビュー
たーぼー
『大化の改新』を基に創作された歌舞伎絵巻であるが、読んでビックリ。蘇我蝦夷が早々に死ぬとかどういうこと?史実どこ行った?の連続。もはや、そんなことを突っ込むのはヤボというもの。岡田嘉夫の絢爛たる絵とともに幻想の眩暈を感じようではないか。そして、やはりいかに『三種の神器』が神聖不可侵なるものであるか、怪奇と神秘への日本人の傾倒が根強いものかが思い知らされる。天智帝、藤原鎌足といった『美しい人々』、蘇我蝦夷、蘇我入鹿といった『醜悪な怪物』とを対置させるケレン味溢れる世界に浸れること、うけ合い間違いなし。
2017/05/05
NAO
読友さんのお勧め。私が観るのは歌舞伎ではなくもっぱら浄瑠璃だが、この作品は題を知っているだけだった。大化の改新を元にした話ながら、まだできていない春日大社や興福寺が出てきたり、蘇我入鹿がとんでもない化け物だったりと、史実なんかまったく気にしない荒唐無稽かつ壮大な一大絵巻。傾いていた竹本座は、この作品で息を吹き返したとか。それにしても、この作品に限らず、江戸時代の浄瑠璃作者は、簡単に人の首を切り落とすなあ。それだけ時代が平和だったということなのだろう。絢爛豪華迫力満点の岡田嘉夫の歌舞伎絵、最高。
2017/05/17
syota
時代考証は見事なまでに滅茶苦茶。これを時代劇と受け取ってはいけない。架空世界を舞台にした奔放なファンタジーなのだ。そう割り切れば、不死身の妖怪蘇我入鹿が日本国を乗っ取ろうと企む大陰謀劇に、ロミオとジュリエットばりの悲恋を絡めた一大スペクタクルとして大いに楽しめる。岡田嘉夫さんの絵も絢爛豪華かつ幻想的で、物語のファンタジー色をより一層強めている。なまじっか史実に忠実であるよりも、このくらいぶっ飛んだ方が物語としては面白い。(第2回 江戸時代を知る「テーマ:歌舞伎」に参加)
2018/02/12
たま
緊急事態宣言下ストリーミングで見る令和3年初春文楽公演、二つ目の演目は『妹背山婦女庭訓』の道行恋苧環、鱶七上使、姫戻り、金殿の段。橋本治さんの絵本を通読しあらましは理解したが、なんとも荒唐無稽の極みで目が点になる。ところが舞台(お三輪の出演場面が中心)を見ると、彼女の圧倒的な存在感、恋心の懸命さに心を奪われ、筋立ての粗が気にならない。大島真寿美さんの『渦』でお三輪の愛らしさは操り人形にしか表現出来ない、お三輪は浄瑠璃の女をみんな呑み込んでいると語られるのを思い出し、本当にその通りだと感心してしまった。
2021/02/11
tama
図書館本 岡田嘉夫シリーズ 大化の改新は中大兄皇子が蘇我氏に起こしたクーデター。その後で中大兄皇子が天智天皇になる訳だから、この話の取っ掛かりから(一応日本史好きだった私には)混乱の極み。糸紬に使うおだまきと花のオダマキの両方が描かれ、二つを結ぶ糸は男女の縁としても現れます。吉野川の別荘が出てくる辺りから満開の八重桜とお雛様が背景のモチーフとなり、若い二人が死んで一対のひな人形が吉野川に流されるシーンは拡大ページ!更になんと次のページの井戸替えシーンに重なるという素晴らしい構成。本シリーズ一番の大作です!
2015/09/21
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