きみはいい子 (一般書)
きみはいい子 (一般書) / 感想・レビュー
優愛
知ってるよ。君は悪い子なんかじゃないってことを僕は知ってる。君はいい子。だからそんな風に静かに隅で涙を流すんでしょう。心を押し殺して気づかれぬよう叫ぶんでしょう。止まない反響しては消えない助けての声が聞こえる。信じて。その小さな叫びを掬い取ってくれる存在は、その一筋の涙を拭ってくれる存在はきっと君の側にあるから。君は何にも悪くない。優しさは時に仇となるけれど憎しみに染まらないでいて。私が保証する、そのままの君でいいんだから。唯一無二の愛しい命を宿した君の存在がどうか大切な人の中で生き続けていけますように。
2015/02/25
にいにい
初中脇初枝さん。五篇の虐待に絡む作品群。一つの町で起こる重く、切ない話の連続。しかし、どの話も、誰かが誰かにちょっとした幸せをあげている、それが、その子・人を助ける。自分にも良い所があると自己受容出来る。現実は、もっとひどいこともあるのだろうけど、この作品は、希望を見せて、読者に後を任せる。中脇さんの優しさを感じる。自分を認める大切さを伝えるメッセージを。人と付き合う際、手元に置いておきたい一冊。みんなに思ってほしい「わたしは、いい子」って。
2015/01/19
風眠
静かな文章で、やさしい雰囲気の表現が多いけれど、痛みと緊張と悲しみの川が物語の根底をザーザー流れている。暗闇の中、声をあげずに泣いている子ども。我が子に手をあげてしまう親の苦しみ。そんな嵐の夜に、助けが必要な人の為にドアを叩いてくれる人がいてほしい。ひとつの町を舞台に語られる物語は、現実にいくつもある町となんら変わりない、どこにでもある風景だ。虐待という重いテーマを扱っているのに、何となくじんわりと温かい気持ちになるのは、誇張しすぎない文章表現のせいか、それとも物語それ自体が持つ「救い」のせいなのか。
2012/11/12
めろんラブ
家庭という檻の中でひしめき合う家族という群れ。群れには序列があり、上位の者は独善的な掟を振りかざす。暴力が日常の中にある暮らしと小さな命が健やかに成育する環境に接点は見出し難い。そんな自明の理を、理性を凌駕する感情が飲み込んでいく・・・。重いテーマながら、優しく瑞々しい筆致に助けられて読了。声高ではないが故、幼き恐れと悲しみがよりひそやかに胸を突く。慎重に閉じ込めておいた記憶が暴れ出しそうになった向きもおられるのではと思わせる、迫真の人物・心理描写が白眉。端的で本質的なタイトルも◎。
2013/05/17
匠
同じ街に住む登場人物たちがリンクする短編集のような構成で、家庭と学校における様々な問題を描いていた。新米教師の経験不足による学級崩壊は胸が痛かったし、発達障害やモンスターペアレンツ、暴力だけではない虐待のさまざまな形など盛り込んでいて興味深く、ページ数があるわりに一気に読んでしまった。大きな感動とか救いを求める話ではなく、淡々と追っていくドキュメント式の展開はリアル。個人的には最後の「うばすて山」で、まったく同じ経験をした子ども時代の自分と母との関係が重なりすぎて、あれも虐待と呼ぶのかとショックを受けた。
2013/10/03
感想・レビューをもっと見る