十六夜荘ノート
十六夜荘ノート / 感想・レビュー
まこみん
物語は現代と過去の平行進行、過去は笠原丹青という華族令嬢、現代は彼女の遺産相続人で、遣り手を自負する大崎雄哉が主人公。昭和13年、丹青の家は海軍省に勤める兄の一鶴が男爵当主。兄は自由主義で自宅の広間を若い画家達に自由に出入りさせ、一鶴自身もピアノを優雅に奏でる。だが次第に軍国統制の世へ移り、理不尽な出来事に丹青は強く立ち向かっていく。雄哉の方は相続する屋敷が破格賃料のシェアハウスと知り、住人を立ち退かせようとする。又、思わぬ事から会社を辞め、挫折感を味わう。月の様に人の人生にも満ち欠けがある。本当の遺産。
2018/09/16
yanae
人の気持ちは理解できないけど仕事はできる主人公。ある日突然、大叔母から目黒にあるシェアハウス「十六夜荘」を相続することに。ボロボロの建物は潰す。そのつもりで相続の準備を進めていたが…。なぜ大叔母は自分に十六夜荘を相続させようとしたのか。大叔母の人生を調べ始める。現代と戦時中、両方の視点から物語が進みます。個人的に「晴れたらいいね」、「彼方の友」と戦時中の話が続いているので、読んでいて辛いところも。今作は戦後たくましく生きる玉青がとても魅力的。そして最後の最後、教授の正体には驚き!素敵な1冊でした。
2018/08/01
モルク
大伯母が亡くなり、一等地の洋館を相続することになった雄哉。その一本気で自信家の性格故に会社も辞めざるを得なかった状況下で、売却を考えるがそこはシェアハウスとなっていた。大伯母である男爵令嬢玉青の戦中戦後と、現在の雄哉とシェアハウスが交互に描かれる。玉青の強い信念と生きざまそして兄への想いがその時代背景とともに生き生きと描かれ、雄哉の心情も住民との関係も懐かしい「じゃがいもの味噌汁」をきっかけとして変化する。結果は最初から想像できるものであったが、それでも話に引き込まれていった。
2017/11/14
ゆみねこ
エリートサラリーマンの雄哉は、全く面識のない大伯母の遺産を引き継ぐことになった。遺された古い洋館は、変わり者4人が暮らす「十六夜荘」と呼ばれるシェアハウス。雄哉のパートと大伯母玉青のパートで交互に語られ、最後は少し泣かされました。中々良かったです。古内さん、これで3作読了しましたが、今のところ全部当たり、追いかけてみたいです。
2016/03/13
ぶんこ
十六夜荘のある街は、あそこだろうな。そう思い浮かべながら読んでいると、駅前にあった古いマーケットが蘇り、玉青さんが風呂敷を抱えて凛とした姿で立っているのが見えるようでした。戦時中の玉青さんの言動には、どんなに勇気が必要だったか。そんな偉大な大伯母から相続されたのは古いお屋敷で、既にボロボロ。しかも4人の男女が住み着くシェアハウスでした。企業の最前線で周囲を顧みずにがむしゃらに働いていた雄哉は、退去してもらって、土地を売り払う事しか考えられなかった。それが大伯母を知るにつけ変わっていくのが爽快でした。
2016/03/14
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