ゼラニウムの庭
ゼラニウムの庭 / 感想・レビュー
うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
私がもの書きになったのは、祖母から聞いた話を書きまとめてみたいと思ったのがきっかけだった。その祖母も亡くなってから10年の月日が流れ、ようやく書き始めることができた。その話とは家族の秘密に関わることで・・。話の設定自体はSF小説などでおなじみのものでしたが、過剰な所を削ぎ落していた分、底辺に流れている物悲しさのようなものが印象に残ったお話でした。彼女はこれからどう生きていくのでしょうか。その後が気になります。★★★★
2012/11/11
財布にジャック
表紙と題名からイメージして、勝手に海外が舞台のお話かと思っていたら、全く違いました。他人の家の家族の秘密を陰から覗き見をさせて貰っているような、そんな読み心地で始終ドキドキしっぱなしでした。こういう題材をホラーっぽくなく、しみじみと読ませるところが大島さんならではだと感心しました。これは空想ではなく、もしかしたら本当にありそうと錯覚してしまうほど小説の中に浸ってしまい、読み終わって本を閉じて考え込んでしまいました。
2013/08/06
なゆ
いつまでも美しく、たくましくあれ。いつまでも長いこと咲き続ける、ゼラニウムの花。曾祖父母の代から守り続ける、一族の秘密。双子の片割れである祖母豊世の語りで、家族や関わる人々の戸惑いや苦悩、秘密中心の生活が描かれる。この不可思議な設定に、ホラーや神懸かり的ラストばかりがちらついた。…が、実に淡々とした話に終始していて、それが逆にうすら寒い感じを醸し出しているような。『嘉栄附記』は短いが、これがあるからこそ印象深い1冊になっている。〝希望を持って生きるのではなく、絶望とともに生きる〟の一言が悲しい。
2012/11/24
キムチ
不可思議な時の空間を一挙に旅した・・140年。歳を取る速さが異常に遅い嘉栄を磁場として物語がゆっくりと進んで行く。その謎を秘する・・だが記録に落とすという宿命を持つるみ子が語り手。恐れおののく双子の片割れ豊世に続き、結婚、出産に息苦しさを抱える静子、妾の品子、冬馬などが存在すらも蜻蛉の様な揺らめきがある。生まれた時から括弧つきの存在であった嘉栄と対比してみなの生死はうっすら響く鎮魂メロディーにも似て・・。筆者が書かんとしたのは永劫に続く時間に対する絶対時間の生か。余りぞっとしない感覚を覚えた。
2015/11/07
Yuna Ioki☆
1310-6-6 大島真寿美作品発読み。独りで生きるのは自由であり、不自由でもある。人のあとから死ぬより先に死にたい派の私には嘉榮のような人生を生き抜くことができるのか?独りで居ることは苦痛では無いがやはり置いていかれる辛さに耐えられないだろう自分を想像してペットを飼うことすらできない私には嘉榮の強さと諦めの良さが欲しい。
2016/03/13
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