([お]4-4)ゼラニウムの庭 (ポプラ文庫 お 4-4)
([お]4-4)ゼラニウムの庭 (ポプラ文庫 お 4-4) / 感想・レビュー
優希
面白かったです。信じてはもらえないかもしれない秘密。でも、その秘密を抱えてそこにいる彼女。一族の秘密を紡いだ物語は一人の女性の秘密だったというのがそこはかとない怖さを感じました。不思議な運命を背負い、誰よりも長い一生を過ごすこと。それは普通とは違う家族の物語なのかもしれませんが、命というものを織り上げていく深いテーマのようにも思えます。
2016/09/08
NAO
時間の流れの中人が成長し老いるスピードは、多少のずれはあっても、誰でもほぼ同じだ。老化症という病気があって、通常の人より老化の度合いが極端に早い。ならば、逆の現象はあるのだろうか。双子として一緒に生まれたのに、成長のスピードが全く違うために自分だけがどんどん老けていくのをまざまざと見せられる。そんな状況に置かれたら、どんな気がするだろう。この物語は、永遠とはいわないまでも百年以上にも渡って若くあり続けるということはどういうことか、について考えているのだろうか。その孤独と倦怠。
2023/10/17
黒胡麻プリン
命を繋ぐとか子を産み育てるといったことに肯定的な感覚を持てない私にとって、登場する女性たちの子を産み育てることへの葛藤は今一つピンと来なかった。ただひたすら、同じ時間を生きることが出来ない者たちのすれ違いが悲しい。「絶望とともに生きていたって、希望は時おり瞬くのです」という言葉に、人生の妙を感じる。時おり瞬く希望があるから、人は人生を投げ出せないのだと思う。
2016/03/14
mincharos
自分の周りの人は普通に年を重ねて、結婚し子を産み、そして死んでいく。でも自分は人の倍の時間がかかり、置いてきぼりにされる、そんな数奇な運命を背負っている嘉栄。切ないだろうな。人を好きになったところで添い遂げられない。働くこともできない。そんな状態で長い長い人生をどうやって生きればいいんだろう。私だったらどうする?私は退屈すると死んでしまう人間だから、だから本を読むし、結婚して子供を産んだし。みんなと同じスピードで成長し、老いて死んでいけることの幸せをものすごく感じた。るるちゃんって響きが可愛かったな!
2018/05/11
エドワード
数年前にブラピのベンジャミン・バトンという、爺さんから若返っていく男の映画を観た。手塚治虫の「火の鳥」にも永遠に死ねない呪われた人間が出て来る。本作は、なんと普通の人間の半分の速度で生きる女性の物語。明治43年に双子で生まれた嘉栄と豊世。二人は同じ二十歳になっても、嘉栄は十歳の少女にしか見えない!家族は嘉栄を大きな屋敷に隠して育てる。私の家族と世代が重なるため、嘉栄を隠し続ける家族に妙なリアリティを感じる一方で、ファンタジーをも感じてしまう不思議な物語。どこの家族にも必ず、世間から隠している秘密がある。
2017/01/26
感想・レビューをもっと見る