KADOKAWA Group

Facebook X(旧Twitter) LINE はてブ Instagram Pinterest

i(アイ)

i(アイ)

i(アイ)

作家
西加奈子
出版社
ポプラ社
発売日
2016-11-30
ISBN
9784591153093
amazonで購入する

i(アイ) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ヴェネツィア

「この世界にアイは存在しない」ーすなわち虚数"i"が物語にロンドのごとく繰り返し登場する。その着想と構成はよくできていると思う。ここで言っていることはよくわかる。わかり過ぎるくらいに。それが問題である。すなわち、あまりにもメッセージがストレート過ぎて、小説としては成功しているとは言い難いのである。主人公のアイがシリアからアメリカに養子としてやってきたことが、この小説が説明的であることの最たるもの。テヘランに生まれた西加奈子さんが、これを書いた、もしくは書かねばならなかった気持ちは重々わかるのだが。

2022/01/15

starbro

西加奈子は、マイブームの作家です。読む順番を繰り上げて、本書を今年の大トリに抜擢しました。主人公は、圧倒的な魅力・存在感ながら、その血、ルーツから「この世界にアイは存在しません。」と深く思い悩みます。世界の数多の死、悲劇と主人公の悲しみがシンクロしますが、最期に一筋の光&ⅰ(愛)が確認出来ました。物語のラストをイメージした著者の表紙絵も素敵です。今年のMyBEST20の上位に滑り込みセーフ(これから入替ます)!!!今年は本書で読了、430冊目でした。

2016/12/31

ウッディ

シリアで生まれ、裕福な米国人の父と日本人の母の養子として育ったアイ。自らが選び取った訳ではない現在の幸せに悩み、貧困にあえぐ人々と何でも選択できる自分の間にどんな差があったのかと心を痛める。存在しない虚数の「i」と自分の名前「アイ」を重ね合わせ、自らのアイデンティティを見出せずに生きるアイが見つけた自分の存在意義とは?色々と考えさせられる重い読書だった。アイは頭が良すぎ、ナイーブ過ぎる故の不幸だと思う。自分が幸せであると思うことの罪悪感を持ち続けるという不幸を抱えたアイの成長記は、興味深かった。

2018/05/13

風眠

「この世界にiは存在しません」数学の教師は言う。けれどアイは思う「ここに存在している私って何?」と。裕福で愛情に溢れた夫婦の養子として育った、ワイルド・曽田・アイ。なぜ自分が選ばれたのか?幸せを享受できず、自分自身を肯定できず、アイは苦しみ考え続ける。世界はこんなにも残酷で、不平等で、多くの人が災害やテロの犠牲になっている。「この世界にiは、」ラスト数頁でアイは自分に問う。花びらが舞う、余白、救い、また余白。その余白にはきっと、言葉にならないアイの葛藤が書かれていたのだろう。この世界に・・・iは存在する!

2017/02/01

Yunemo

あまりに内面に深化するので息苦しくて。独りよがりの考え方と想う自身がいて戸惑うばかりで。せっかく「i」という概念で本作が始まったのだから、数学での一つの解決策があっても、との想いあり。リアルな世界情勢と数学の世界といわゆるアイの世界とが、整理されないままに終盤まで、最後の最後になって方向性が。恵まれ過ぎたばかりに起こる罪悪感、現実部分を目にしたら、思考だけの世界ではないはずなのに、どう行動するか、それが小さなことでも。大上段に構えると、こうした作品にならざるを得ないのですね。ただ勘違いしている自身がいて。

2017/05/21

感想・レビューをもっと見る