ガラスの梨 ちいやんの戦争 (ノベルズ・エクスプレス 38)
ガラスの梨 ちいやんの戦争 (ノベルズ・エクスプレス 38) / 感想・レビュー
ヒラP@ehon.gohon
自分の母親をモデルにしたという、戦争の物語です。 太平洋戦争の勃発で、家族や友だちや生活までも、大変な荒波に放り出された、現実を一人の少女の眼を通して、生々しく描ききっています。 大阪大空襲の地獄の中で何が有ったか、実在した人たちをモデルにして、あまりの迫力に圧倒されて読み終えました。 このような戦争体験を経て、現在が有ることの重みを改めて感じました。 著者は、実の母親の姉に養女として出されたそうです。 その養母の存在感も、自分としてしっかり理解した形で描かれています。
2020/06/19
かもめ通信
著者が実母をモデルに書き上げたという物語。滑り出しは少し堅苦しい印象をうけるが、家族構成や生活様式も平成生まれの子どもたちには、こうした説明がなければなかなか理解できないものなのかもしれない。皮肉なことに主人公の暮らしが苦しくなればなるほど、戦争がもたらすあれこれが悲惨さを増せば増すほど、物語も勢いを増し読みやすくなっていく。戦後70年以上がたち、子どもたちはもちろんその親の世代でさえも、実際に戦争を体験した世代の話に直接耳を傾ける機会が少なくなっている今だからこそ、親子で読む1冊としてお薦めしたい。
2018/08/15
杏子
大阪空襲を経験した、著者の実母をモデルにした戦争文学作品。酷い描写もあるけれど、これが戦争の真実なのだと思う。このことは伝えるべき、後世に生きる人々に、戦争の悲惨さ、引き裂かれた家族の悲劇、市井に生きる普通の人々が巻き込まれていった戦争というものの恐ろしさ、二度とやってはいけないのだということを骨の髄にまで染み通らせるべき。無責任に、戦争を軽く見て、間違った知識のもと間違った行為をしないためにも。ちいやんとお姉さんたちとの交流が唯一心を和ませてくれた。
2018/11/12
まる子
笑生子が小学3年生〜23歳までの間の物語。小学生の時に兄が出征し、死別。その後、戦争は悪化して食べ物、物資はなかなか手に入らない。焼夷弾に焼かれた人々、疎開での厳しさ、友達の死、母の看病と小学生が経験するには辛い現実ばかりだ。結婚後は子供にもめぐまれ、小夜子を姉の養子へ。その小夜子の物語が『あした、出会った少年』になるそう。著者の水越さんこそが小夜子にあたり、『ガラスの梨』は母である笑生子がモデルの物語。水越さんや母が知る戦争が二度と起こらないために「家族で読んで考えて欲しい」と込められている。
2024/02/10
マツユキ
大阪が舞台と知って、読みたくなりました。作者の母親の戦争体験が元になっています。 昭和16年、主人公の笑生子は、小学三年生。弟が連れて帰ってきた犬を家で飼うことに。 そんなエピソードから始まるこの物語。戦争は前から続いていたけど、生活が、どんどん変わっていく様子が、笑生子の目を通して、よく分かりました。空襲が恐ろしい。戦争は、敵味方関係なく、人を変えてしまう。地獄のような日々の中でも、大切に、繋げていった縁。最後まで、成年にいやん…。作者のあとがきも読みごたえがあり、学ばなければと思いました。
2020/08/18
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