幽霊宿の主人(あるじ): 冥境青譚抄 (白泉社文庫)
幽霊宿の主人(あるじ): 冥境青譚抄 (白泉社文庫) / 感想・レビュー
はつばあば
不法移民の子供から昭和の時代を見せてもらった「狐擧伝」から波津さんの幽玄の世界ともいうべき、冥界と明治・大正の現世を行き来する青之介さんに移行。『雨柳堂』の蓮といい、男の色気をたっぷり見せつけてくれる波津さんに惚れ惚れ。たまには眼福も必要也
2016/07/16
shikashika555
夕暮れから明け方までは月や星あかりの他は火をおこさねば闇で、人の目では見えない世界が一日の半分を占めていた頃。 曖昧で迷信じみた異界のものと生身の人が隣り合わせで生きていた頃。 明治初期、そんな古いものを脱ぎ捨てて新しい「日本」に生まれ変わった端境期が舞台。 特に「夜の聲」が印象に残る。 現代でも目に見えない悪意や害意には形が無い。 そして自発性も無い。 どこからともなく湧いて出て、どうやってか「形代」を得て出てきて、どこへともなく消える。 意思が強すぎても弱くても、形代として憑かれやすいのかしら。
2023/06/19
井月 奎(いづき けい)
お化けは好きですが出会ったことはありません。しかし、金沢を旅した時に夜の朝野川を散歩していると、夜の闇の中にさらに暗いところがあるように感じました。物の怪などの命の源である者たちはそこにいるのではないかなあ、と感じたのですが、怖さよりもほの温かく、少し悲しく思ったのです。私は、闇の向こう側に住んでいる者たちから命を手渡されているのだと思います。ですのでできる限り丁寧に生きなければならないのです。なぜなら私の命は私一人のものではないのですから。闇の向こうを覗ける青年が狂言回しの役を担ってくれています。
2015/08/15
天の川
鹿鳴館時代が舞台というのが絶妙。闇が真の闇だった江戸から人工的な灯りが照らし始めた東京へと移っていく時代。主人公の青之介が藩主の御落胤であり、趣味人として生きることを許されるのは、イギリス貴族の社交界を模そうとしたこの時代なればこそ。そこに湿り気を帯びた日本の情緒が絡み、波津ワールド全開です。思いを残して世を去った人々の心を抱きとめる青之介が何とも艶かしい…。おつきの藤言さんがまた渋くて、ステキ。
2013/10/22
ホレイシア
雰囲気がたまりませんな。
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