全て緑になる日まで (白泉社文庫)
全て緑になる日まで (白泉社文庫) / 感想・レビュー
S.Mori
思春期の少年少女の内面を繊細に温かく描いて、切なさで胸が締めつけられる作品ばかりです。やっぱり作者が描く世界が大好きです。1つ選ぶとしたら「F式蘭丸」です。母が再婚することになったよき子のもとにハンサムな青年蘭丸が現れます。彼は美しすぎて、よき子の周辺がざわつき始めるのですが……。蘭丸の正体は想像がつくのですが、それでも詩的に描かれ、キャラクターとして比類ない存在感があります。大人になると、よき子のような純粋さは失われるのかもしれません。でも誰もが胸の中に持っていると信じたいです。
2020/06/22
烏鳥鷏
表題作、物悲しい。怒涛の長文モノローグが情緒を掻き立てる。「絵を、あの中に自由と光と緑をつめてやったよ」嫁ぎ先でなにも奴隷のごとく扱われるわけではなく裕福でそこそこ幸せにやれるんだろうけど、その進路は彼女が自由の中で選び取ったものではないんだよな。 「アポストロフィS」の「椿の花を落とさないで」と言いながらのキスシーンがエロい。椿の花は散りやすい、それを頭に飾りながらのキスは、恋愛的なことをしてみたいけどそれ以上に進むのは怖い少女心理がうんちゃら。 古めかしい少女性が詰まった一冊
2018/10/30
訃報
『F式蘭丸』『10月はふたつある』あたりはものすごく素直に「なんていい話なんだ…」ってなる。ストーリーテリング力えぐい。
2018/09/27
ルーシー
「死んだら魂は空気のようにこの世のものたちといともすんなり融合できるかもしれません あたしもうあしでまといになりたくない わたし融合したいんです」(f式蘭丸より)世間通例の接吻やベッドシーンを排除しお互いの精神を愛すると誓った恋人の蘭丸は、よき子の作り上げた虚像。母親の再婚と、初めて抱いた恋心と向き合えない純潔病である彼女の混沌とした感情。でも、ちゃんと救ってくれる人がいたんです、それは虚像の蘭丸じゃなくて、生身の男の子。大島作品の言葉選び、配置、なんでこんなにも琴線に触れるんだろう。泣きながら、再読。
2017/07/21
白い駄洒落王
なかなかよろしい。これにて大島弓子の積読すべて読了。
2013/08/01
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