黒龍の柩 上
黒龍の柩 上 / 感想・レビュー
藤枝梅安
10年以上前に発行されていた北方さんの「新選組」。土方歳三を中心に、幕末をそれぞれの思いとやり方で生きる男たちを硬質に描く。山南粛清の北方さんの解釈は新選組ファンには受け入れられるはず。勝海舟と土方、坂本龍馬と土方の対面はテレビドラマにもない面白さと緊張感。西郷を「小心者」と断言する小栗。銃撃を受けた近藤は沖田と共に療養する。二人の姿が哀しい。土方の思いは既に北海道に飛んでいる。船戸さんの「満州国演義」に通ずる壮大かつ冷酷な歴史絵巻の迫力に圧倒されて下巻に向かう。
2014/08/07
アルピニア
北方氏が描く土方歳三。物語は池田屋事件の場面から始まる。斬り合いの場面は少なく、土方が勝、坂本、小栗、榎本などの人物と関わりながら新たな日本という夢を追いかける様が描かれる。沖田の澄み切った心情、近藤の理想、次第にそれらとは違うものを見る土方。山南の脱走事件についてはこれが真実であって欲しいと思った。幕末は様々なifや解釈をかき立てる激動の時期だと痛感する。大水滸伝からこの作品に来たが、中華あるいは大陸の戦人と武士の描き方の違いに驚きながら読み進めた。上巻は、伏見の戦いで退き、江戸へ移ったところまで。
2022/06/10
ポチ
同志として新選組を真剣に想う土方と山南がいい。北方新選組も熱い。下巻へ。
2021/11/19
槙
何度か出てくる「闇の中で手さぐり」っていうのがぴったり。先の見えない中で精一杯、手さぐりしてる人たちの物語。「夜明け前」だから一番くらくて闇が深いのも無理はないな。大河ドラマの「新選組!」ファンなので山南敬助と土方歳三がなかよしなだけで、ご飯3杯いける感じだった。学者の手による歴史書と、小説家の書く歴史小説はまったく別物で、歴史小説は結末のみネタバレしてる推理小説でもあると思うのだけど、いかに読者を気持ちよく騙し結末まで読ませるかが作者の腕であり読者も騙されていることを楽しむくらいがいいのだと思う。
2018/05/03
maito/まいと
北方御大が描く幕末新選組。国家の変換期に、あるべき姿を模索する山南、勝、そして彼らを見つめていき、いつしか大きな流れに身を置き、想いを託されていく土方。新選組という組織にいながら、1人の漢として、自立していくが、その姿が利害を超えた友人を産み、友との別離へと進んでいく。切なさが心をかき乱していく・・・山南が勝の腹の内を読む過程はすっ飛ばし過ぎだが、以降は土方の理解のスピードに合わせて、物語が進行していくので流れが理解しやすく、それでいて重厚な展開が進んでいく。そして龍馬の構想が時代を変えていくのだが・・・
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