チョコレートコスモス
チョコレートコスモス / 感想・レビュー
風眠
『ガラスの仮面』へのオマージュということらしいので、ついつい飛鳥=マヤ、響子=亜弓、と思ってしまいそうになった。恩田陸の作品では、ミステリーしか読んだことがなかったので、こういう群像劇のような雰囲気は新鮮だった。オーディションで飛鳥と響子が演じる『欲望という名の電車』のブランチの実像(響子)と影(飛鳥)による演技の場面が、なんと言っていいのか言葉が見つからないくらい心動かされた。実際に映像になったとしても、ここまで感動しないのではないかと思うぐらい、文字・言葉でしか表現しえない世界観であった。
2012/04/19
紅はこべ
大好きなサキの作品が使われているのが嬉しい。恩田さんはシェイクスピアでは『真夏の夜の夢』がお気に入り?『中庭の出来事』でも使われていたし。同世代の女優の力比べをするのにふさわしい芝居なのかな。聖千秋の『サークルゲーム』の歌劇団入団テストのシーンでも使われていた。ミステリにこだわらないなら、面白い。オーディションの結果にも意外性があるし。そういう意味ではミステリかな。
2008/06/14
ヒロ@いつも心に太陽を!
私はヒナギクに触れることもなく、自意識過剰に、「役」ではない「役者」を演じていただけで演劇から離れてしまったんだなぁと皮肉に昔を振り返りつつ読了。でもあの舞台のライブ感とか即興の緊張感や怖さは少しだけ知ってるつもり。だからこそ作中のオーディションの場面は目の前でその舞台を目にしているようすっかり夢中になって手に汗にぎって読んでしまった。「役者は、人間なんだよ。役者は、人間をやるんだよ」そうですね、私もそう思います。で、この話の続きはいつ読めるんですか(´□`*)!?
2012/05/06
mura_ユル活動
「役者のオーディションを書きたかった」筆者あとがきで。奥田さん二冊目。奥深く非常に厳しい場所「舞台」。演出家、脚本家との駆け引き。芝居は待ったなしの実務能力を求められる。無名の女優、佐々木飛鳥。(空手が)怖くならないと、これ以上強くならない。居心地が悪い方が人間は良く考える。間合い。テネシー・ウィリアムズの『欲望という名の電車』。神谷があの子のことが分かった瞬間、『ゴクリ』っとなった。芝居の名作がわからなかったのでその部分の楽しみは半減してしまった。中古店で購入。
2014/08/28
hiace9000
名著『蜜蜂と遠雷』より遡ること10年、既にここまでの作品があったとは…。役者は人間を演じる。人のもつエゴ、プライド、嫌らしさも崇高さも、また矛盾する自己をも包摂し、役に没入する。その恐ろしいまでの麻薬的魅力を見事なまでに描ききる本作。刹那刹那の心情の揺れ動きを巧みに切り出し見せることで、読み手まで劇中の客席に臨場させ、劇世界没入させてしまう筆力は見事。チョコレートコスモスの花言葉は「移り変わらぬ思い」。響子、飛鳥のみならず演技に魅せられ、演劇に見入られた人々の変わらぬ思いと覚悟を綴る、圧巻の群像劇ここに。
2022/10/02
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