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めぐらし屋

めぐらし屋

めぐらし屋

作家
堀江敏幸
出版社
毎日新聞出版
発売日
2007-04-01
ISBN
9784620107110
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めぐらし屋 / 感想・レビュー

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pino

一度目の読書では、主人公の蕗子さんの血の巡り具合と合わすように自分の体調の波も崩れてしまった。ともあれこの物語りを再び味わいたくなった。父の遺した大学ノートに記された「めぐらし屋」とは。知られざる生前の父を追うべく、記憶の糸を手繰り寄せる蕗子さんの心模洋が細やかに描かれる。幼き日の蕗子さんと父と母との風景はどこか歪み、それがゆるゆるとしている。蕗子さんの心の傷みも例えば蛇口の水に擬えられる。静かに時は経過する。置き傘、濡れたハンカチ、ハイライト。あたたかい謎に導かれるように蕗子さんは踏み出す。幸あれと思う

2018/04/11

(C17H26O4)

てくてくと歩くような速度で読んだ。重くはなくむしろ軽い読み心地なのに、すたすたと早足で読もうとしてもなぜか読むことができなかった。ちゃんと文字を追った。きっとそれが丁度よい速度なのだ。亡き父の遺品整理をしていて見つけた大学ノートをきっかけに、蕗子さんが知らなかった父の姿を知り、かつてを振り返り、人々と出会い、蕗子さん自身を少し見つめるのに丁度よい速度。わたしにも。春に亡くなった父のことを自然な距離と時間を保ちながら、思い出しながら読めた。

2020/10/11

蘭奢待

近ごろ亡くなった父親が一人で住んでいた部屋の片づけをしているうちに発見したノートと、かかってきた電話。父親は何をしていたのか、めぐらし屋とは何かを紐解いて行く。 会話の多い文体で、盛り上がりに欠ける日常を淡々とした文章で綴る。雪沼系。 堀江作品は一人称の方が自分好みだな。

2020/04/15

クリママ

蕗子さん、と主人公に敬称がついている。日常の生活、家を出て一人で暮らしていた父親の遺品整理から湧き上がる父への思い、そして、父のノートにあった「めぐらし屋」。いつもの穏やかな文章の中に、蕗子さんだけでなく周りの人たちもくっきりと浮かび上がる。そして、この作品にはストーリーがある。ただ、体の不調を自覚し周りの人たちに心配されながらもちっとも生活を改善しようしない蕗子さんが好きになれなかったのが、残念だった。

2021/11/05

aika

ものやひとの記憶が緩やかに繋がり、風景を囲みながらめぐっていく連想の旅路に、穏やかな心地になりました。『雪沼とその周辺』同様、雨の描写が存分に味わえて、堀江作品で雨が降っていると小躍りしたくなります。父の遺品整理の為にアパートを訪れた蕗子さんが出会った、一冊のノート。その表紙にある「めぐらし屋」という言葉に惹かれ、突然鳴った電話をきっかけに、ゆっくりと始まる物語。家族、職場のひと、生前の父が出会っていた人たち…細やかながら懸命に生きる人たちをそっと見守る堀江さんの世界に浸れて、幸せな休日の読書時間でした。

2021/04/18

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