待ち遠しい【毎日文庫】
待ち遠しい【毎日文庫】 / 感想・レビュー
イシカミハサミ
最近よくあるといえばよくある、 多様性と「普通」の対立、というか共存。 これがさすがの柴崎さんの文体で綴られる。 黄色い家。 ファストファッション。 1人暮らし。 車。 生活の中の個性から、 さまざまなものを暗示させる。 暗示させられているものを、 暗示していると認識してしまうこと自体が、 世の中の「普通」に毒されている証拠かもしれない。
2024/02/29
miu
わたしはつくづく市井の人のなんてことない日常をうまく描く作家が好きだ。柴崎友香もその一人で今作「待ち遠しい」ももちろん最高だった。一人で賃貸の離れに住む春子と大家で母屋に住むゆかり。ゆかりの甥の嫁沙希。ご近所付き合いは面倒くさくもありがたいもの。そして次から次へと気付きを得るもの。あしたからちょっと目に映るものが変わるかも。ご近所付き合いはしないと思うが、人ともう少し関わることもいいのでは、と思えた。
2023/03/05
まなみ
ご近所付き合いからの人間関係のお話。とても近くて心地よい関係というよくある話とは違い、ほどよい緊張感のある関係性がこれまで読んだ小説とは違っていて良かった。お互いに話をしてきつく聞こえるシーンは少なくないのだけど、春子が自分の思うことについて話をしたり、相手の話に共感や否定をするでもない感じが私には素敵に見えた。「待ち遠しい」これは人生のテーマかもしれない。
2023/08/14
ヨシ
離れの一軒家を借りてシングル生活を楽しむ春子39歳。母屋に越してきた、亡夫を忘れられない63歳ゆかり。ゆかりの甥の妻で裏手の家に住む沙希25歳。価値観が全く違う三人がご近所になったことで知り合い、自分を見つめ直し、自分の生き方に気付くまでのお話。「わたし以外のほかの誰かが決めることじゃないんです」という言葉が心に残る反面、全てを忘れるほど沙希がイヤすぎた。こんなに嫌いな登場人物は初めてかもしれない。
2023/06/04
ちゃんぷる
「普通」と「違う」を丁寧に書いてくれて、読んでいて気持ちが落ち着く本でした。もちろん、穏やかな場面だけじゃなくて、この場面イメージつきすぎてしんどいな…ってとこもあったんだけど、それはそれでよくて。読み終わった皆さんはきっとわかっていただけるかと思うのですが、他人と関わるって大変だけど、それが生きるってことなのかなって。みんな違う、なんてのは当たり前なんだけど、「違う」って概念は「普通」があるからこそ生まれて、その「普通」ってのは各々の人生観やバックグラウンドによるなと。ニュートラルに生きたいものです。
2024/05/31
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