記憶と沈黙 (辺見庸コレクション 1)
記憶と沈黙 (辺見庸コレクション 1) / 感想・レビュー
捨て犬
辺見庸の世代は、神と悪魔の交代が起きた天地動顛の時代を、幼い胸に吸い込んで生きた。彼らもいまや老い、やがて、それほどの猶予なく、この世から姿を消していく。久しぶりにテレビに映った辺見庸を見て、そう思った。彼らの生きているうちに、後を託された世代は、彼らとの決着をつけねばならない。かの世代の評価を下さねばならない。彼らの持つ怒りは、沈黙であれ叫びであれ、私たちにその必要性を迫る。私たちはまだ彼らの怒りに応えきっていない。本書は威厳をもって、誠実に、詩人の緊密さを保ちながら、大きな声で、私にそう訴えてくる。
2014/10/11
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