岡本太郎が撮った「日本」
岡本太郎が撮った「日本」 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
岡本太郎と写真との結びつきは存外に深いようだ。かつて、彼がパリにいた当時にはブラッサイ、マン・レイ、キャパといった名うての写真家たちとの交流もあり、とりわけブラッサイとは仲がよかったらしい。本書は1957年に『芸術新潮』に連載された「日本再発見ー芸術風土記」の写真群である。岡本はそのために日本全国を行脚し、これらの写真を撮ったのである。ただ、彼の絵画や塑像と比べると案外にも平凡な印象は免れない。素材も秋田ならナマハゲ、出雲では出雲大社などと驚きがない。アングルや構図にしてもそうだ。
2023/12/16
ホークス
2001年刊。岡本太郎が撮った、秋田や長崎など日本各地の写真。岡本敏子は「写真でなく岡本太郎の目、一瞥の火花」と言う。表紙の目といい、土着というものに体当たりで挑んでいる。「民芸」という言葉への岡本の批判が出てくる。権威づけや権威への依存、美しいものの堕落に岡本はすぐに気づく。個々の人間が創造に向かって開ききる、という理想に反するからだ。被写体は常に、人間の原初的なエネルギーだと思う。茶道や仏教などの伝統っぽいものに対しても、エネルギーを挫く存在ではないかと疑う。岡本らしい、健全な猜疑心だと思う。
2024/08/16
たまきら
梅原猛さんが太郎さんの「俺が縄文土器を発見したんだ!」という言葉に失笑している人たちを見て「いや、彼こそが最初に縄文土器の価値をはっきり理解した人なんだから、彼の言葉は正しいんだ」というようなことを何かの本で書いていらして、にやりとしたっけ。芸術家は言葉足らず。でも、その情熱や関心は視点で取り込める。太郎さんの写真は初めて見たけど、「日本」「原点」への熱い視線を感じました。
2016/01/15
鈴木
本当岡本太郎は唯一だと思うわけです。彼は写真家ではないけれど、彼の撮る写真はとてもすき。ギリギリッと太郎が表現するように、なんかこう、緊張感があって強いように思う。もちろん絵や言葉やオブジェもそうだけど、写真に関しては自分も撮るからより思う。彼の見る世界に惹かれる。こんな日本は、きっともうない。
2012/08/24
あた
スナップショットの素晴らしさに驚くと思います。多分軸がはっきりしての撮影だからとこの本に惹かれるのだと思います。 岡本太郎の挑む姿勢と時代の流れ、また、時代の流れに対する岡本太郎の感情の移り変わりを見ることができます。また、写真の選択にもありますが、岡本太郎の優しさにも触れることができると思います。表現者 岡本太郎のいつもと違う一面に興味があるならばぜひ。
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