夜と霧 新版
夜と霧 新版 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
評価に違わない歴史的な名著である。これまでの同種のものとは違って、きわめて冷静沈着に語られていながら、小説以上に感性も激しく揺さぶられる。とりわけ美しいのが、アウシュヴィッツでひそかに妻の24歳の誕生日を想うくだり。結果的に筆者は、この妻と2度と会うことはなかった。また、哲学的な意味においては、「わたしたちにとって生きる意味とは、死もまた含む全体としての生きることの意味であって「生きること」の意味だけに限定されない、苦しむことと死ぬことの意味にも裏づけされた、総体的な生きることの意味だった」の認識は深い。
2013/10/02
ehirano1
ついに大名著且つ世界的ロングセラーを読んでしまいました。著者がナチ収容所のサバイバーということもあって一体どんな体験が書かれているのだろうと年甲斐もなくかなりドキドキしてページを開き、読み進めました。感想は、「この本に出会えたことを深く感謝したい、唯只管感謝したい、そんな気持ちでいっぱいです。」
2016/11/04
風眠
言葉は、年月とともに古びてしまうものなのだと思った。1956年の旧訳よりも馴染みのある言葉づかいで、確かに読みやすくはなっている。コンプライアンスだなんだと、細かい事にも配慮されるようになったからだろうか、資料であるはずの解説が削られ、写真が削られ、本文で使用される言葉も削られている。どんなに残酷であろうと、気分が悪くなろうと、解説は読むべきだし、写真も見るべきだと私は思う。事実を知った上で本文を読めば、ひとりの心理学者が書いたこの体験記録が、どんなに貴重であるかを知るだろう。人間というものを知るだろう。
2018/04/12
青乃108号
それほど厚くはない本なのに、読むのにかなりの時間がかかった。ユダヤ人強制収容所の、悲惨な状況を描いたドキュメントなんだろうな、ぐらいにしか思っていなかったのだが。想像を遥かに超えて、【生きるとは何か】の深層に言及した崇高な書物だった。悩める現代人にも一読の価値あり。
2021/12/04
zero1
ホロコーストは、日本人から見て他人事ではない。その証拠にLGBTを「生産性がない」と主張した議員がいた。収容所にはユダヤ人だけではなく、同性愛者も入れられた。また、ヘイトスピーチは日本人の排他的な部分を見せた。どうして人はここまで残酷になれるのか?それは、人の中には天使と悪魔がいるから。天使はシンドラーや杉原。悪魔は虐殺を「作業」として行った「悪の凡庸」アイヒマンたちナチス。我々は、悪魔を追い出すことができるか?本書が「過去のこと」として必要としない日はやって来るのだろうか?冷静に描いているのが恐ろしい。
2018/10/23
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